ジャニーズ社名変更が意味する「決別」 文化人類学者が見た名称問題

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聞き手・堀越理菜

 故ジャニー喜多川氏の性加害問題を巡り、にわかに世間の注目を集めているのが、「ジャニーズ事務所」という社名の行方だ。人々が名前にこだわる背景に何があるのか。文化人類学者で東京工業大副学長の上田紀行教授に聞いた。

 ――そもそも、社名のように集団を表す名称というのはなぜ必要なんでしょうか。

 人や集団を識別するだけなら、記号で十分です。例えば、国際電話の国番号で、日本は81で米国は1ですね。地域も郵便番号で表せます。会社名も、番号で識別することができます。それぞれを識別できれば記号で十分なはずですが、人々が特定の地域や共同体で時間を刻む中で、歴史が作られ、記憶が刻まれ、愛着が生まれ、それを表象しようとする。それが名称です。会社名もその一つですね。

 ――自分の名前ならともかく、社名や地名といった名前でも、変わることにそれなりの抵抗感があるのはなぜでしょうか。

 「A会社の田中」と何度も言ったり言われたりするうちに、田中さんにとって社名は自分のアイデンティティーになっていくからです。自分自身が何者なのか、人生にアンカーを打ち込むという意味でも、歴史や愛着を含んだ名前のついた組織が必要になってくるものです。

失われるアイデンティティー

 ――地名でも社名でも、人の…

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ジャニー喜多川氏の性加害問題

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