年収の壁、みんなどうしてる? 研究者が語る「壁ない方がいい理由」

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聞き手 編集委員・沢路毅彦

 労働者が手取り収入が減らないように労働時間を調整する「年収の壁」の実態はどうなのか。壁がなくなるとマクロ経済にどのようなプラスの影響があるのか。自治体の課税データをもとに研究している近藤絢子・東京大学教授(労働経済学)に聞きました。

 ――企業からは毎年のように年末になると就業調整で人手不足が深刻だと聞きます。

 「就業調整をする『年収の壁』と言われるものには、主に4種類あります。①自治体によりますが、住民税の課税対象となる96万~100万円②所得税の課税対象となる103万円③一定の条件で社会保険加入義務が発生する106万円(月8万8千円)④年金の第3号被保険者の上限である130万円です。第3号被保険者は配偶者が会社員や公務員の場合、その扶養に入って自分で保険料を払わなくても年金などに加入できる人です。年収全体が見え始める年末に労働時間を減らして壁を越えないようにする動きが目立ちます」

 ――「年収の壁」がどうなっているか、研究しているそうですね。

 「一部の自治体ではありますが、住民税の課税記録データを使って、配偶者のいる女性の税引き前給与収入の分布を調べ、実際に就業調整がどのように起きているのかを研究しています。分布を調べると、103万円の壁が130万円の壁よりも目立ちました」

なぜ?130万円の方が影響大きいはずなのに

 ――その結果をどんな風に受け止めましたか。

 「103万円を超えた場合は…

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この記事を書いた人
沢路毅彦
編集委員|労働
専門・関心分野
労働問題・雇用政策