邦人拘束「中国に堂々と主張を」 及び腰な政府に元警察官僚は訴える

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聞き手・田島知樹

 中国で2014年に反スパイ法が施行されてから少なくとも17人の日本人が拘束され、10人が裁判で有罪判決を受けています。今年、法律が改正されて、さらに取り締まりが強化されそうです。中国の対応は理解に苦しみますが、元警察官僚で内閣審議官なども務めた南隆さんは、日本側の対応にも問題があるといいます。南さんに話を聞きました。

みなみ・たかし 1952年生まれ。警察庁入庁後は諜報事件などを捜査する外事畑や公安畑が長い。89~92年に在中国日本大使館1等書記官。元内閣官房審議官兼内閣情報調査室審議官。

 ――すでに多くの日本人が拘束されています。

 中国政府は詳細を公表しませんので、報道などを元にまとめると、14年に反スパイ法が施行されてから、17人が拘束され、全員が「スパイ」と認定されているようです。このうち10人が裁判で有罪判決を受けています。量刑は重く、懲役3~15年。昨年、70代の元航空会社社員の方が獄中死しています。

 今年7月には改正反スパイ法が施行されました。幅広い解釈が可能でより広範囲に「スパイ」の摘発が可能となりました。

 ――人権の視点からも異様な事態です。

 判決文を読むと、実質的に中国の国益を害したのかどうかではなく、日本の公安調査庁と接したという事実をもって「スパイ」と認定しているようです。日本であれば、政府関係者と接し、時に質問することなどは通常の社会生活の範疇(はんちゅう)に含まれる合法的な行為でしょう。同じレベルの活動をしている在日中国人はごまんといるはずです。

 ――常軌を逸しているように思います。

 しかし、中国の姿勢自体は以前から変わっていないと思います。

 私は1989~92年に北京にある在中国日本大使館に出向して、天安門事件も現場で目撃しましたが、流血による弾圧後の戒厳令下、危険分子と見なす外国人やそうした外国人と交流のある中国人に対する当局の監視体制はかなりのものでした。

 ソ連崩壊後は、中国は経済は改革開放していくが、政治改革は一切しないという姿勢でした。外国資本は歓迎だが、共産党の一党独裁体制を揺るがすような西側文化の流入は阻止するというものです。

 ――具体的にはどんな攻撃姿勢でしたか。

後半では、日本政府やメディアの問題点を厳しく指摘します。

 例えば邦人記者が中国共産党…

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この記事を書いた人
田島知樹
文化部|文化庁担当
専門・関心分野
文化政策、国際政治、特に欧米の外交史
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    遠藤乾
    (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
    2023年9月25日9時15分 投稿
    【視点】

     かなり厳しい身内の政府批判ーー警察について何も書いていないが、大筋、私は正論と思う。  一番直に大事なのは、「公安調査庁と接したという事実をもって「スパイ」と認定している」という部分。私は一度札幌のシンポジウムでたまたま公調の参加者と名刺

    …続きを読む