14歳の娘はなぜ亡くなったのか スマホとSNSに残された手がかり

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ロンドン=藤原学思
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 なぜ、14歳の娘は死ななくてはならなかったのか。防ぐことはできなかったのか。どうしたら、同じような子どもたちを少なくできるのか。

 ロンドン近郊に住む映像ディレクター、イアン・ラッセルさん(60)は、答えを探し続けている。娘の死から6年近くの努力は、ひとつの法律として、まもなく実を結ぶ。

 英国で、ネット上の有害コンテンツから子どもたちを守る「オンライン安全法」が成立します。法制化を大きく後押ししたのは、14歳で亡くなった少女の父親です。インタビュー内容と英国の動きを、2回に分けてお伝えします。

 ラッセルさんの娘、モリーさんは3姉妹の末っ子だった。「愛くるしい」。親族だけでなく、友人も、友人の家族もそう描写した。

 夏は家族でセーリングに出かけた。「水しぶきをあげて、笑う声がいまも耳に残っています」。冬はスキー。「ゲレンデの端っこを滑るんです。叫んで、笑って。ああ、またモリーの声が聞こえてきそうです」

 好奇心が強く、賢くて、いつも周囲を気にかけていた姿が心に残っている。「でも、残念なことに、彼女は自分自身のことは、あまり気にしていなかったんです」

あれは、小さな「兆候」だったのか

 体を動かすのが好きで、乗馬も習っていた。

 ただ、2017年のはじめに「やめてもいい?」と聞いてきた。

 理由は「もう、うまくならないかなって」。あれほど好きだったのに。いまになって振り返れば、それが小さな「兆候」だったのかもしれない。

 モリーさんはその頃、自室で過ごす時間が少しずつ長くなっていた。でも、10代の子どもにとって、それは「ふつうのこと」だと思っていた。2人の姉だって、そうだったのだから。

 モリーさんを含め、娘3人の誕生日はみな11月。17年11月18日の土曜日、21歳の長女と18歳の次女の誕生日を合同で祝った。自宅は親戚や友人らであふれ、モリーさんも「コーヒーマシンの使い方を教えて」などと言いながら、家中を歩き回っていた。

 その夜。モリーさんがソファに座るラッセルさんの腰に手を回し、左肩に頭を乗せてきた。「お、珍しいね」。そう言うと、モリーさんは満面の笑みを見せた。

 週明けの月曜日。モリーさんは学校から家に帰ると、宿題をして、オンラインでそれを提出して、いつものように家族で一緒に夕飯を食べて、テレビ番組を見た。そして、自室のベッドに向かった。

 「またあしたの朝ね、モリー」

 ドア越しに声をかけたラッセルさん。「またあしたの朝ね、パパ」

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 それが、最後の会話になった…

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