片手でも、左利きでも「使いやすい」 まひ患者の声で作ったリュック

江戸川夏樹

 脳疾患で体にまひが残る人とファッションデザイナーが協力して、片手でも使いやすいリュックを作った。背負い方、ジッパーの開閉、ポケットの高さにこだわり抜いた。名前は生活の傍らにという意味を込めて「SIDE MY LIFE」。ファッション性と機能性を備えたバッグは、出かける意欲を高めることにもつながりそうだ。

 開発したのは、デザイナーの伊藤卓哉さん。世界的ファッションデザイナー、故三宅一生さんの元で働いた後、2014年から、廃棄される車のエアバッグを使ったカバン作りを始めた。ブランド名を「yoccatta TOKYO」と名付けた。

 1年前、百貨店でのイベントで1人の女性に出会った。脳卒中患者によるイベント集団「脳卒中フェスティバル(脳フェス)」のメンバーで、脳出血の影響でまだまひが残り、片手で使えるリュックを探しているという。これがきっかけで、エアバッグのカバンを改変する形で、脳フェスと共同のリュック作りが始まった。

 試作品を作り、メンバーの声を聞きながら、工夫を重ねた。手のどちらかにまひが残る人でも対応できるよう、ファスナーをつける側をリュックの右か左か選べる。持ち手とひもはこれまでよりも大きく。深すぎて取り出しにくいと言われたペットボトル用のポケットは浅くした。

予想の6倍 クラウドファンディングで

 製品化のため、8月末までクラウドファンディングで支援を求めたところ、予想の6倍の金額が集まった。

 厚生労働省によると、脳血管疾患で通院している患者は全国で118万人と推計される。うち14%が20~64歳の就労世代だ。

 脳フェス代表の小林純也さん(40)は「介護用品にもファッション性を求める人は多いし、障害者が使いやすいものは健常者にとっても使いやすい。障害者と健常者の間には、持ち物も『壁』があると感じていたが、それを壊すことは、出かける意欲を高めることにもつながるはず」と語る。(江戸川夏樹)…

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