電車の中に電車が走る ことでん志度線のジオラマ、愛好家が展示

福家司
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 【香川】高松市牟礼町で保存・公開されている大正生まれのレトロ電車「20形23号」の車内に、電車が活躍していた約30~40年前の高松琴平電気鉄道(ことでん)志度線の沿線を再現した鉄道模型のジオラマが展示された。レトロ電車を守ってきた男性の「電車の中に電車を走らせたい」という思いを、愛好家らが実現した。

 レトロ電車は、四国霊場85番札所の八栗寺と86番札所の志度寺への遍路道の途中にあるNPO法人88(エイティエイト)の施設で保存・公開されている。

 1925(大正14)年の製造で、2020年9月の引退時には、営業路線を走る電車として国内最古だった。88の笹尾正福(まさとみ)・代表理事(68)がことでんから譲り受け、お遍路さんの休憩所として活用。鉄道ファンにも人気のスポットだ。

 笹尾さんはあるとき、「電車の中に電車を走らせたい」との思いを鉄道カメラマン、坪内政美さん(48)=同市=に打ち明けた。坪内さんが志度線沿線で育った友人の会社員男性(30)=同市=に伝えたところ、仲間とともに鉄道模型のジオラマ制作に取り組むことに。中学生から70代までレトロ電車に思いのある愛好家ら約20人が参加し、約1年半で仕上げた。

 ジオラマは長さ3・6メートル、奥行き0・9メートルで今橋から屋島、牟礼に至る志度線沿線の1980~90年代を再現。琴電屋島駅や今橋車両所、春日川橋梁、桜の咲く房前駅、海沿いを走る路線をはじめ、かつてあったスーパーマルナカ屋島店や、春日川の河川敷で今も開かれる川市のにぎわいなども再現した。走り抜けるのは、23号をはじめとしたレトロ電車の模型だ。

 人のフィギュアは300人、車の模型は200台、自転車の模型は100台を使い、完成直前に設置した。かつてスーパーの屋上であった仮面ライダーのテレビロケ、駐輪場にずらりと並んだ自転車の列までも精巧に再現している。

 完成したのは「88の日」としている8月8日で、制作者らが集まって神事もした。

 リーダー役を務めた会社員男性は「昔の写真や記憶などをもとに懐かしい景色を再現したので、今の風景と見比べてほしい。仲間たちみんなの思いが一つになり、ここまで細部にこだわることができた」と話す。屋島や五剣山を描いた背景画もその後、展示された。

 最初にアイデアを出した笹尾さんは「古きよき時代の風景がよみがえり、まさにレトロ電車内にふさわしいジオラマだ。想像もしていなかったすばらしい出来栄えで、本当にありがたい」と感激している。

 見学できるのは午前10時~午後5時。火曜定休。入場料200円(乗車証明書付き)。お遍路さんは無料。問い合わせは88(080・6282・6088)。(福家司)

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