高齢者に偏見を抱いていると…年を取った自分に生じうる驚きの傾向

有料記事

聞き手・高重治香

 「優しいけれど無能」「使えないから雇わない」――。誰でも年はとるのに、高齢者に偏見を向けてしまうのはなぜでしょう。社会心理学者の清水佑輔さん(25)に尋ねると、そんな偏見が自分自身にもたらし得る、思わぬ副作用についても教えてくれました。

 社会心理学では、人は初対面の相手を年齢や人種、性別でカテゴリー分けしやすいとされています。世界でも日本でも、人種と性別による偏見と比べて、年齢による偏見を扱った研究は少ないですが、僕は問題の重要度が低いとは思いません。

 年齢による偏見の中で多いのは、他の世代から高齢者に対して向けられる偏見と、それに基づく差別でしょう。典型的なのは、年齢だけを理由に雇わない、給料を下げるといった雇用に関する差別です。

 若者や中年世代への偏見もありますが、「最近の若者は」などと一くくりに批判されることはあっても、具体的な権利が侵害される場合は、比較的限られています。最近ではコロナ禍が、高齢者に対する他の世代の否定的な態度を強めるきっかけになりました。「高齢者を守るために」として外出や行動の自粛が求められたからです。

肯定と否定の組み合わせ

 高齢者に対する偏見が一見偏見だと気づきにくいのは、「温かい(優しい)けれど無能である」と、肯定と否定がセットにされやすいからです。人が人を判断する時、温かいか冷たいか、有能か無能か、というのは重要な2軸なのですが、「温かい」という評価を一応与えることで、無能という偏見が正当化されやすいのです。

 女性も「温かいが無能」とい…

この記事は有料記事です。残り993文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【春トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

この記事を書いた人
高重治香
論説委員
専門・関心分野
ジェンダー、文化