「採算性で議論するな」 JR米坂線復旧へ、沿線市町村など意見交換

坂田達郎
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 昨年8月の豪雨で甚大な被害を受け、一部区間で運休が続くJR米坂線について、山形、新潟両県の11市町村の首長や幹部、地元選出の国会議員、県議ら約50人が8月31日、早期に復旧するようJR東日本などに要望していく方針を確認した。

 両県や沿線市町村、観光団体などでつくる米坂線整備促進期成同盟会の総会が新潟県関川村であり、復旧について意見を交わした。

 米坂線は米沢(山形県米沢市)―坂町(新潟県村上市)間の90・7キロ。昨夏の豪雨では山形県飯豊町で鉄橋が崩落するなど、JR東日本によると被害は山形県側68カ所、新潟県側44カ所の計112カ所に上った。全体の約75%にあたる今泉(山形県長井市)―坂町間で運休し、復旧の見通しは立っていない。

 総会で同盟会会長の仁科洋一・山形県小国町長が「米坂線を利用する住民やファンから復旧を待ち望む声がある一方、廃線になるのではと不安の声も聞こえる。通学や通勤、通院の足として重要な役割を担っており、必ず鉄道として復旧させる」とあいさつした。

 JR東日本は今年4月、復旧費86億円、工期5年と試算を発表。同社新潟支社の白山弘子支社長は7月の定例会見で「単独では解決が難しい課題」と話すなど、費用負担のあり方が論点の一つに浮上している。

 「このままでは沿線自治体の負担や採算性、どれだけ赤字が出るのかという議論に終始してしまう」

 この日の復旧に向けた意見交換で、飯豊町の後藤幸平町長は問題提起した。

 JR東日本によると、運休している今泉―坂町間の2021年度収支は、今泉―小国(小国町)間は赤字額8億5800万円で1日の平均利用客226人。小国―坂町間がそれぞれ5億3600万円、124人だった。

 後藤町長は「小国町の子どもが米沢市の高校に行けない、などという環境をつくってはいけない。沿線自治体が集い、どうすれば利用拡大ができ、なぜなくせないのかを具体的に示すべきだ」と述べた。

 山形県川西町議会の井上晃一議長は、地元のNPO法人が存続への署名活動を始めたと紹介し、「近隣でも署名が始まっており、大変心強い。各地域が一緒に取り組み、全国の鉄道ファンも巻き込めるよう応援してほしい」と機運を盛り上げようと呼びかけた。

 11年7月の新潟・福島豪雨で大きな被害が出たJR只見線は昨年10月、約11年ぶりに全線で運行再開。福島県や会津17市町村が存続を要望し、約90億円の復旧費の3分の1を地元で負担するなどした。

 総会後、同盟会の仁科会長は報道陣の取材に対し、この経緯を踏まえ「地方の足を守ることは国の責任。欧州では国同士が組み、地方の線路を充実させている。生活に必要な線路を守ることが非常に重要になる」と国の支援を求めた。

 同盟会ではJR東日本や国に対し、地域公共交通の再編と災害からの復旧は分けて考え、早期の復旧や、段階的な運行再開の検討を求めていく。(坂田達郎)

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