リニア新幹線、国の認可取り消しを認めず 東京地裁、住民の請求棄却

金子和史
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 東京・品川―名古屋間で工事が進むリニア中央新幹線について、工事に反対する沿線住民らが、JR東海の計画を認めた国を相手取り、認可の取り消しを求めた訴訟で、東京地裁(市原義孝裁判長)は18日、請求を棄却する判決を言い渡した。

 工事は、2014年にJR東海が環境影響評価などを踏まえて国土交通相に申請し、認可された。住民側は、環境影響評価は水源への影響や地盤沈下、騒音・振動、南アルプスの自然環境に与える影響などについて「具体性に欠け、不十分な内容だ」と主張していた。

焦点は環境影響評価

 判決は、環境影響評価に基づく認可が違法となるのは、国交相の判断が、重要な事実の基礎を欠いているか、社会通念に照らして著しく妥当性がないことが明らかな場合と指摘。今回の評価書は省令などに基づいた手続きがとられており、記載事項を精査しても「認可に違法があるとは認められない」と判断した。

 南アルプスの自然環境をめぐる住民側の主張については、「自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するもの」と述べ、これを理由とした取り消しは求められない、と退けた。

 原告側は会見で、「安全性の問題など鉄道事業の根源的な問題を投げかけたが、裁判所は答えなかった」と批判した。「国やJR東海の主張をうのみにした判決だ」とも語った。

 補助参加人として参加したJR東海は「適切に判断いただいたと理解している。引き続き着実に工事を進めていきたい」とコメントした。

 訴訟は沿線住民ら約780人が16年に起こした。東京地裁は20年12月、「工事や運行により著しい被害を受ける恐れがある地域に住んでいる」と認めた1都6県の約250人に限り、訴訟を起こす資格(原告適格)があるとする中間判決を出した。

 リニアの品川―名古屋間は27年の開業予定だったが、工事は思うように進んでいない。(金子和史)

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