あるミュージシャンのスピーチ 入管法改正、強い後悔と「次の朝」
「いま僕は37歳で、両親も日本人で、結婚して子どももいる。要するに超一般的な、特権性を持つマジョリティー男性なんですけど、こういう僕みたいな人間に責任があると思ってます」
5月、難民認定申請中の外国人の送還を可能にする入管難民法改正案に反対する集会で、1人のミュージシャンがこんなスピーチをした。
日本社会の「マジョリティー」の責任とは。
スピーチしたのは、8人組ソウルバンド「思い出野郎Aチーム」でボーカルとトランペットを担当する高橋一(まこと)さんだ。5月12日夜、国会前の約4千人を前にこう続けた。
「ウィシュマさんをはじめ、入管で命を奪われてしまった人たちのニュースを見たときに、強い後悔に襲われました。なぜならどの方も、我々が救えた命だからです」
「この後悔はもう、一生消えることはないでしょう。だけど、だからこそ、もういい加減こういった問題を我々で止める必要があると思います。残念ながらこの国では、ただ生活しているだけでは、国家ぐるみのレイシズムと暴力の片棒を担がされる」
◇
数日前に市民団体からスピーチを求められたとき、高橋さんは少し迷った。専門家でも難民当事者でもない自分が話をしてもよいものか――。
「あと正直に言って、リスク、保身が頭に浮かんで。SNSで自分が攻撃されるんじゃないか、バンドやレーベルを巻き込むんじゃないかとか」
朝鮮人虐殺 意識した歌詞も
しかし、「断ったら、結局は…
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- 【視点】
心に迫り、そして何かを突きつけられる記事でした。 差別は「差別される側」の問題ではなく、「差別する側」つまりマジョリティー側の問題です。「当事者じゃない人っているんでしょうか?」という問いかけを読み、マルティン·ニーメラーの有名な言葉「彼
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