仲岡しゅん弁護士寄稿 トランスジェンダー「モンスター」という偏見

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私の視点 仲岡しゅん弁護士

 トランスジェンダーに対する差別や偏見をあおる動きは、ここ数年の間に急速に広まっている。トランス差別をあおる団体は複数存在しており、積極的にロビイング活動を行うなど、政治やマスメディアに対しても徐々に影響を及ぼし始めている。

 そうした団体の主な主張の一つは、トランスジェンダーなどという存在を認めると、女性用のトイレや浴場などに、「自分は女だ」とかたった犯罪目的の男性が入れるようになってしまう、というものだ。

 たしかに、そうした場に悪意ある男性が入ってくるというのは、少なからずの女性からすれば懸念を抱かざるを得ない事態だろう。これは、トランスジェンダーの実情を知らない人たちからすると一定の説得力があるらしく、インターネット上でこうした投稿があふれかえり、トランスジェンダー脅威論とも言うべき差別扇動が繰り広げられている。

 しかし、冷静になっていただきたい。ある男性が、「自分は女だ」と言いさえすれば、直ちにあらゆる女性用の場を使えるかのような想定が、そもそも日本の法律実務からすれば荒唐無稽なものでしかない。

 トランスジェンダーの「トラ…

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    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2023年6月23日8時17分 投稿
    【視点】

    トランスジェンダーと、「『自分は女だ』とかたる犯罪目的の男性」とが、まったく別物であるということが理解できない、あるいは別物と知りつつトランスジェンダー差別のために後者を持ち出す人々の歪んだ意図を改めて感じる。 性暴力や盗撮などの犯罪が後

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    田中俊之
    (大妻女子大学准教授 男性学研究者)
    2023年6月23日9時33分 投稿
    【視点】

    男性がトランス女性を偽り、女性が性犯罪被害にあう可能性について本当に懸念しているのならば、同じ熱量を持って例えば電車の痴漢被害にも取り組むべきでしょう。トランスジェンダーの問題だけに焦点化する意味はないはずです。記事にあるようなトランスジェ

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