「開業に向けて進行中!」のはずが...品川で止まったリニアの掘削

有料記事科学とみらい

鈴木智之 竹野内崇宏 編集委員・佐々木英輔
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 「世界初、品川発。」「開業に向けて進行中!」

 海外からの旅行客やビジネスパーソンが行き交う東京・JR品川駅前。ビルを見上げると、巨大なリニア中央新幹線の広告が目に飛び込んできた。

 品川駅は、ソニーや日本マイクロソフトなど、主要企業が集まる一大ターミナルだ。リニアはここを出発し、地下40メートル以深の「大深度地下」のトンネルを進んで名古屋へ向かう。「首都の玄関口」の機能強化を見越し、駅前では国際会議場が入る超高層ビルや、広大な歩行者デッキの計画も進んでいる。

 駅から南に20分ほど歩くと、東海道線東海道新幹線の線路の間に、巨大なクレーンと白い壁に囲まれた工事現場が現れた。リニアのトンネルを掘り進める拠点「北品川非常口」だ。

 近くの歩道橋から見下ろすと、作業員が慌ただしく行き来している様子が見えた。ここには直径約30メートル、深さ80メートルの大きな縦穴が開いている。この底から、「シールドマシン」と呼ばれる回転式の大型掘削機で、名古屋側に向かって工事が進む……はずだった。

リニア中央新幹線の工事が足踏みしているのは、地下水をめぐって膠着状態が続く静岡工区ばかりではない。リニアは、今の時代に合う未来なのか。

 ところが、2021年10月に掘削を始めてから5カ月でマシンは止まり、1年近く立ち往生することになった。掘り進められたのは50メートルほどで、拠点の敷地から出ることもできなかった。JR東海の担当者が「想定していなかった」という事態だった。

 JR東海によると、削った土をほどよい固さにする添加剤の注入設備が故障し、掘削の効率が上がらなくなった。マシンの前面に土がこびりつき、取り除くのにも時間がかかったという。点検や改良を経て、ようやく再開したのは今年3月27日だった。

 愛知県春日井市でも昨年、大深度での掘削の準備作業でシールドマシンのカッターが損傷。開始が大幅に遅れている。

相次ぐトラブルに不安の声

 リニア中央新幹線は品川―名古屋間の9割近くをトンネルが占める。開発が進んだ東京、神奈川、愛知の都市部は大深度地下を通す。地上に影響が及ばないという前提のもと、法律で地権者の同意や用地買収は不要とされている。

 ところが、その前提が揺らい…

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