第4回「説明責任とは、納得が得られて初めて果たされる」片桐直人教授

有料記事憲法を考える 2023

聞き手・千葉卓朗
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 防衛力強化を進める岸田政権は、戦後認めてこなかった建設国債による防衛費調達を認める転換を行った。憲法が定める「財政民主主義」の形骸化につながらないか。憲法と財政法に詳しい大阪大学の片桐直人教授にインタビューした。

 片桐教授は「今の政治のあり方は、憲法の財政民主主義が描いた姿ではないだろう」と指摘。説明責任と透明性が「憲法83条の基本的な要請」とし、「説明責任とは、ただ言えばいいというものではなく、聞いた人の納得が得られるようにして初めて果たしたことになる」と述べた。

 ――そもそも「財政民主主義」とはどういうことなのでしょう。

 税のあり方と予算を議会が決め、財政を民主主義的にコントロールする、というのが基本的な考え方です。欧州では、絶対君主制の中世から立憲主義の近代になって民主制が浸透していく時代に、議会の力が強まりました。議会が一番最初に持った権限は、課税への同意です。

 予算は、君主が財政を管理するために作成した表が起源だといわれています。君主は予算を議会に示して課税の必要性を訴えるようになった。「なるほど、だから税が必要なのか」と議会が納得すれば課税に応じる。こうして君主に対し、財政を統制する議会の力を手にしました。

 ただ、災害や戦争が起きれば税では足りないことがあり、その場合は君主は借金をするしかありません。この借金は最終的には税で返済される、という確約があった方が借金をしやすい。そこで議会は、公債発行に関しても議決するようになりました。

 ――戦後の日本国憲法では、国の財政は国会の議決に基づくとする83条を中心に定められています。

戦後憲法の財政民主主義とは

 日本国憲法の財政民主主義の柱は、税と予算と公債発行の三つを議会が議決することです。明治憲法も基本は同じでしたが、議会の議決の効力を薄めるために例外規定がたくさん設けられていた。天皇の大権に関する事項や、法律であらかじめ決まっている費用について、議会は政府の同意なく削減できない、といった規定です。

 日本国憲法はこうした例外規…

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