40代で捨てた研究とやりがい 「背に腹は…」雇い止め前に選んだ道
A-stories 研究者を「使い捨て」にする国
理化学研究所の研究ユニットのリーダーとして着任したのは、30歳のときだった。
「30歳の若さでリーダーですからね。破格の条件でした」
40代の男性研究者はそう語る。
その前に所属していた国立大学では、工学部で微細加工技術を専門にしていた。理研では、それをバイオの分野に応用する研究を担うことになった。
細胞に発電させたり、ポンプのような働きをさせたり。国内外の専門誌に次々と論文を発表し、その数は100本を超えた。新聞やテレビにもたびたび取り上げられ、学会の賞もたくさん受賞した。
最初は自分だけだったユニットは、やがて15人を超えるチームに成長した。
「仕事とプライベートの区別はありませんでした。24時間、365日、いつも研究のことばかり考えていましたから」
男性は、1年契約の有期雇用だった。
理研では毎年、1年間の仕事内容と次の1年間の計画を報告する。一定の評価が得られれば、翌年も契約が更新される。男性は毎回、高い評価をもらっていた。
だが2016年に風向きが変わった。
理研は就業規則に新たなルールを設け、13年度を起点に、通算10年を超える研究者とは契約をしないとした。
それでも男性は、自分の行く末に不安は感じていなかった。
「うちの研究チームは成果を上げているので、このまま研究を続けていける」という自負があった。
ところが3年ほど前から、男性を不安にさせるうわさが耳に入るようになってきた。
「あのチームは残るらしい」…
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- 【視点】
この国は研究者や将来研究の道に進むことを希望する者にほんとに厳しいとため息つきたくなる記事です。 科学技術・学術政策研究所の科学技術指標2022を見ると、日本では大学院修士課程の入学者数は2010年度、博士課程入学者数は2003年度をピー
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