「なんで避妊しなかった」と責める日本の異常さ 中絶研究者の視点

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聞き手・後藤一也
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 飲むタイプの中絶薬が承認される見込みとなりました。妊娠9週0日までの新たな中絶法になりますが、広く普及するにはまだ時間がかかりそうです。また、中絶の制度をめぐる全体的な議論も深まってはいません。20年にわたって中絶問題を研究している金沢大学非常勤講師の塚原久美さんに、中絶をめぐる課題について聞きました。

 ――経口中絶薬が国内でも使えるようになります。

 海外の治験などから、5%前後の人は中絶が終わらず追加で医療行為が必要となりますが、ほとんどの人は薬だけで中絶が成功し、安全な中絶方法として確立しています。

 薬だと、1錠目を飲んでから36~48時間後に2錠目以降を飲み、その数時間後に多くの人が中絶を完了します。数日は出血がありますが、第三者に自分の体を見られることなく臨めます。

 手術は、心身に対して侵襲的ですが、短時間で済みます。

 どちらを選択するか、女性自身が決められるよう、医師はそれぞれの方法について丁寧に説明する必要があります。

 ――厚生労働省は、販売開始から半年程度は、入院設備のある医療機関のみで使えるように制限をする予定です。

 海外では自宅でも使える薬です。リラックスした空間で、普通の自然流産に近い形で中絶を終えることがメリットであり、入院して監視するのは1番のメリットを消してしまうことになります。

 「薬だと5%が失敗するから」あるいは「数日間のフォローが必要となるから」などといった理由で、薬を過度に管理して使いにくくするのではなく、より使いやすい方法で必要としている人に届けて欲しいと思います。

 劇薬ではなく、安全な薬であることを伝えなければならず、使う人を不安にさせないことが大切です。

当事者責める日本、声上げにくく

 ――経口中絶薬が世界で初めて認められたのは1988年です。日本は35年遅れました。

 日本は避妊ではなく、中絶を…

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    島沢優子
    (ジャーナリスト・チームコンサルタント)
    2023年4月26日17時20分 投稿
    【提案】

    社会課題を前進させるのは、結果的にそこに関連するショッキングな事件が起きたときが大きな機会になることが多いです。この記事にかかわることで言えば、先ごろプロ野球選手が女性にアフターピル代を渡し避妊しなかったと報道されました。選手本人に説明の機

    …続きを読む