性的少数者らに初の宣誓証明書 春日部市

佐藤純
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 性的少数者らのパートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度を4月に導入した埼玉県春日部市が、最初のカップルへ宣誓証明書を10日に交付した。自らの性をめぐって生きる希望を見失いかけ、そんな相手に寄り添ってきた2人は、「安心感が強い」「生きててよかったんだなって思えた」と喜びつつ、制度のいっそうの充実を願った。

 市内で暮らす女性とトランスジェンダーの男性のカップル。戸籍上は2人とも女性で、婚姻届を出すことができないため、市がパートナーシップ制度を始めるのを待ち望んだ。1人が病気で病院に搬送された時、もう1人が家族として扱われず、病状の説明を受けられない経験を市内外で何度もしてきたことが、宣誓の大きな動機だという。

 3月に市が制度導入を発表したのを知り、4月最初の平日だった3日、2人で役所に出向いて宣誓書に署名した。1週間後に手渡された証明書の文書番号は「春人権発第1号」。岩谷一弘市長の名で、「春日部市パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度に基づき、パートナーシップ・ファミリーシップの宣誓をされたことを証します」と記されている。

 春日部市議会では2020年、差別解消や理解促進に向けてパートナーシップ制度などを求める請願を審議した際、反対する1人の議員が、「市内に存在しない差別」「共産主義者、左翼勢力の戦略を甘く見てはいけない」などと発言し、問題になった。

 市議は、市教育相談センターへの性的少数者に関する相談件数が18、19年度に0件だったことなどを根拠としていた。当事者の支援団体が抗議声明を出し、当時の議長も謝罪声明を出したが、発言した議員は謝罪や撤回を拒んだまま、任期満了で昨年引退した。

 宣誓第1号の2人は当時も市内に住み、一連の経緯を注視していた。「『差別は存在しない』という発言は、人をばかにしているとしか思えなかった」と憤る。

 今でも、性的少数者の人格を否定する言葉がSNSなどでしばしば飛び交う。「『普通』と言われる異性間のカップルと同じ生活をしているのに、なぜここまで言われなきゃいけないのか」。2人は、制度の整備とともに、人々の意識の変革を求めている。

 市は、性的少数者の自由な意思を尊重する社会づくりを進めるため、要綱を定めて宣誓制度を始めた。お互いをパートナーや家族として、協力し合う関係であることを書面で宣誓し、市が証明書を交付して公的に認める。結婚のような権利、義務は生じないが、市営住宅への入居や犯罪被害者見舞金の支給などの行政サービスを受けられるようになる。同様のパートナーシップ制度を県内の50以上の市町が設けている。(佐藤純)

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