ススキが茂る田んぼ、障子の落ちた玄関… 中間貯蔵施設の写真展

福地慶太郎
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 田んぼはススキに覆い尽くされ、動物に荒らされた家屋の玄関にツタが伸びる。東京電力福島第一原発で出た除染土などの中間貯蔵施設福島県大熊町、双葉町)のエリア内に残る集落の今を伝える写真展が、いわき市の「原子力災害考証館」で開かれている。

 同館のある老舗旅館・古滝屋(同市)に展示されているのは、フォトジャーナリスト豊田直巳さん(66)=東京都東村山市=が撮影した写真18枚。東日本大震災直後から福島で取材を続けていて、今回の作品は昨年11月、中間貯蔵施設のエリアに自宅や土地がある地権者3人と現地を訪れ、撮影したものだという。

 会場で最も大きな写真が伝えるのは、防護服姿の門馬好春さん(65)が自分の田んぼ脇でひとりたたずむ姿。大人の背丈を超えるほど高く伸びたススキに覆われた田んぼは「原野のよう」(門馬さん)だ。

 何度も動物に入られたという作本信一さん宅の写真では、玄関の中につる草が入り込み、障子やガラスの破片が散乱しているのが分かる。

 中間貯蔵施設の事業区域は福島第一原発の周辺約16平方キロ。国は土地を買収したり借りたりして設備などを建設したが、まだ残されている住宅もある。施設内の除染土や廃棄物は、貯蔵開始から30年となる2045年3月までに福島県外で最終処分すると法律で定められている。

 豊田さんは「写真1枚で現状がぱっとわかるわけではないが、『何が起きているのだろう』と中間貯蔵施設の問題に関心を持ち、考える入り口にしてほしい」と話す。

 会場には、事業の経緯や県外処分を待つ地権者の思い、国の用地補償の問題点を紹介するパネルも展示している。門馬さんは「中間貯蔵施設の課題と問題点を多くの人に知ってほしい」と話している。入場無料。来年2月末まで。福地慶太郎

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