久留里線のあり方、JR東が自治体に協議申し入れ バス化も視野か

田中久稔 藤谷和広 上保晃平
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 JR東日本は9日、房総半島の中央部を走る久留里(くるり)線の久留里(千葉県君津市)―上総亀山(同)間9・6キロのあり方について、県と沿線の君津市に協議を申し入れた、と発表した。同区間では利用者が少なく不採算が続いているため、バスなど鉄道以外の交通手段への転換も視野に入れているとみられる。

 久留里線は木更津木更津市)―上総亀山間32・2キロを結ぶ。県内のJR線で唯一、電化されていない。久留里―上総亀山間では、1キロ当たりの1日平均利用者数(輸送密度)が1987年度に823人だったが、2021年度は55人に減少。100円の収入を得るのに1万9110円かかる状況になっている。

 この日記者会見した中川晴美・千葉支社長は、「利便性が向上する交通体系のあり方を総合的な観点から検討する必要がある」と述べた。路線存続の是非をめぐる議論がされるとみられるが、「特定の交通モードや交通体系を念頭に置いたものではない。前提を一切置かずに議論したい」と強調し、代替手段など具体的な選択肢は示さなかった。

 JR東ではすでに8日、熊谷俊人知事と石井宏子君津市長に文書で申し入れた。今後の協議の日程などは未定という。JR東管内では被災によるバス転換の例はあるが、不採算から路線の見直しへ動き出すのは初めて。代替交通手段への転換のほか、地元自治体が鉄道設備を保有する「上下分離」方式なども選択肢になる可能性がある。

 久留里線は1912年に県営鉄道として開業。沿線人口の減少や道路網の発達などで利用減が進んでいる。JR東で、特に利用客が少ない輸送密度2千人未満の35路線66区間の中では収支率が最低水準。中川支社長は「鉄道の特性である大量輸送のメリットを発揮できていない」と述べた。(田中久稔、藤谷和広、上保晃平)

 JR東日本が協議の対象区間とした地元の君津市。片倉丈寛・交通政策室長は申し入れについて、「びっくりした。(JRとは)利用促進のため一緒にイベントもやってきた。地域の将来像をどう考えるかという問題でもある」と話す。協議の場につくかはまだ決定していない。石井宏子市長は「県と協議のうえ、今後の対応を検討していく」との談話を発表した。

 県は地元の意向を尊重する考え。里見季彦・鉄道事業室長は「地域にとってプラスになるよう、住民の思いに寄り添っていきたい」と話す。

     ◇

 記者会見での主なやりとりは以下の通り。

 ――廃線は検討しているか。

 中川晴美・千葉支社長 利便性が向上する交通体系のあり方を、地元自治体の皆様と総合的な観点から考えていきたい。現時点で具体的に念頭に置いているものや前提はない。

 ――利便性の向上にはどんな選択肢が想定されるか。

 中川 今の段階では、一緒にぜひ議論をとお願いをしたところなので、今後の議論の中で出てくると思う。現時点で前提はない。

 ――バスへの転換は。

 中川 私の方からそうしたお話をしたことはない。自治体の皆様とともにこれから様々な議論をすることになる。

 ――ダイヤ改定で運行本数が減っている。利用減につながったのでは。

 森原大輔・千葉支社企画部長 人口が大きく減り、モータリゼーションが進展するなど、様々な要素が関わっていると思う。

 ――木更津―久留里間も輸送密度が2千人を下回る。協議を申し入れる考えは

 中川 現時点はない。

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 〈JRローカル線をめぐる動き〉 国土交通省の有識者会議が昨年まとめた地域交通の刷新に関する提言には、輸送密度が「1千人未満」の線区を目安に、自治体と事業者に見直しを議論するように促し、「再構築協議会」を創設することが盛り込まれた。動きを後押しするため、協議会を設置するかどうかを国交相が判断できる法改正が今国会で審議されている。JR東日本と西日本は昨年、赤字線区の収支を初めて公表。東日本の2021年度の収支では、輸送密度が2千人未満の35路線66区間ですべて赤字となった。

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