総額5365億円 県が新年度予算案 県立大創設の経費も初計上

寿柳聡
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 佐賀県は総額5365億4400万円の2023年度一般会計当初予算案を発表した。山口祥義知事の3期目最初の当初予算案。SAGAサンライズパーク整備にめどがつき大型の目玉事業がない一方で、これまで進めてきた施策を促進する事業が並ぶ。昨年12月の知事選の公約として打ち出された県立大創設の関連費用も盛られ、初めて県議会の場で議論が行われる。

 総額は過去最高だった22年度当初予算と比べると345億1400万円の減。新型コロナ禍に伴う中小企業事業資金貸付金やSAGAサンライズパーク整備費が減ったのが主な要因だ。ただ新型コロナ対応になお836億円が計上されていることもあり、総額では22年度と21年度に次いで過去3番目に大きな規模になっている。県債残高は187億5500万円減って7530億4100万円になる見込み。

 歳出は、分野ごとの大枠では、医療費助成や子育て支援など「福祉・医療の充実」に約777億円、企業誘致や資金調達円滑化など「産業の振興」に約250億円、新規就農支援や山の保全など「農林水産業の振興」に約210億円を充てた。

 主な個別事業では、新生児のスクリーニング検査を公費でできる20項目に、県独自で脊髄(せきずい)性筋萎縮症(SMA)と重症複合免疫不全症(SCID)を加える事業に3200万円を計上。佐賀大医学部のグループが研究を進めるアトピー性皮膚炎の治療薬の開発支援に1千万円を充てた。

 有明海・玄海両地域の水産資源回復に向けた海の環境改善や貝とウニの放流事業(計8億5千万円)、県立宇宙科学館の「宇宙発見ゾーン」のリニューアル(4億8千万円)、江藤新平没後150年記念特別展の開催(5200万円)なども盛り込んでいる。

 予算案は、16日開会の県議会2月定例会に提出する。約107億4900万円を減額する22年度一般会計補正予算案や、誹謗(ひぼう)中傷や差別を助長するネット上の書き込みに対して県が削除要請することなどを定めた人権関連の条例案なども合わせて提出される。

 県議会の会期は3月10日まで。代表質問は2月24日、一般質問は同月28日と3月1、2日。

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 県の2023年度一般会計当初予算案には、県立大設置準備事業として基本構想の策定費800万円が盛り込まれた。「必要な情報収集や各種調査の実施」「大学教育などに精通した実務家会議の開催」などを行うという。山口知事は「予算が可決されれば次のステップ。県庁内の組織も含めて考えていくことになる」としている。

 知事が示した「県立大学の基本的な考え方」などによると、4年制大学として28年度をめどに開学。IT(情報技術)と経営をベースに学ぶ理系と文系の融合型大学、というのが特徴だ。

 学部はひとつで、複数の分野、学科で構成する。入学定員200~300人(収容定員1千人前後)。主な運営費は地方交付税を活用した県からの交付金と、入学金や授業料などでまかなうという。

 「基本的な考え方」には県内学生の負担軽減や、入試における地域枠と実業系学校枠の設定も検討すると明記。県内にまだない高等専門学校(高専)といった高等教育機関の「さらなる充実」にも言及している。

 県内自治体の関心は高く、すでに半数以上の市町が誘致の意向をみせる。ただ、山口知事は大学創設について「地域振興とは思っていない」と明言。「単に人を増やしたいとか、地域を盛り上げたいから学生を歩かせたいというようなことではない」と述べ、設置場所は「企業、研究機関、教育機関など関係機関との連携を図る観点と、通学利便性なども考慮し決定」する考えだ。

 山口知事は「企業や機関と連携することで様々な価値が生まれていくということ。その深いところを県民の皆さんに分かっていただける努力を、議会も含めてしたい」と話した。

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この記事を書いた人
寿柳聡
長崎総局
専門・関心分野
行政、スポーツ、写真、ロケット、サブカル