第1回飢えて歩けなくなった3歳息子 温暖化、しわ寄せは途上国の弱者に
枯れ枝の上から布やシートを重ねただけの簡易テントの前で、3歳のオスマン君が母のガアレ・モハメドさん(40)に力なく抱きついていた。
体は3歳児とは思えないほどやせ細っているのに、足だけは極端にむくんでいる。
現地NGOの職員がオスマン君の足の皮膚を軽く指で押すと、へこんだまま指の跡が残った。
「栄養失調を起こしている証拠だ」。職員が、そうつぶやいた。
11月9日、アフリカ北東部ソマリア南部の町バイドアの避難民キャンプ。ここでは、飢えに直面してたどり着いたものの、なお栄養失調に苦しむ子どもが珍しくない。
一日一食。それも、同じ境遇の避難民たちにわけてもらったコメでかろうじて食いつないでいるのが、2~14歳の子ども5人を持つガアレさん一家の暮らしだ。
【連載】枯れるアフリカ 気候危機の「犠牲者」
アフリカ北東部が、気候変動の影響とみられる深刻な干ばつに襲われています。11月に開催された国連の気候変動会議(COP27)では、地球温暖化による「損失と被害」を支援する基金の創設が合意されました。気候危機の最前線で何が起きているのでしょうか。ソマリアとケニアの現状を報告します。
ソマリアはいま、気候変動が影響しているとみられる過去40年で最悪の干ばつに襲われている。干ばつが2年以上つづく異常事態だ。
バイドアからさらに数十キロ離れた農村で生きてきたガアレさんは言う。
「こんなことは、経験したことがない。人生で最悪の干ばつだ」
ガアレさんに寄り添う夫のアブディさん(54)が、静かな声で訴えた。
気候危機の最前線で何が起きているのか。後半には現場を取材した動画もあります。
「この町に着いた時、オスマンはもう歩くことさえできない状態だった。病院で治療を受けて、それでもこの状態なんだ」
干ばつに襲われた一家に、何が起きたのか。
「オスマンが弱り始めたのは…
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