エジプトで開かれた国連の気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で20日、温暖化による「損失と被害」を支援する基金の創設が合意された。エネルギー危機の逆風の中、温室効果ガス削減の加速では、これまでより踏み込んだ成果は出せなかった。

 会議は、合意文書「シャルムエルシェイク実行計画」を採択し、閉幕した。

 「損失と被害」への資金支援は、30年前から途上国が求めていた。一方、先進国は米国などが法的責任や補償に結びつき賠償額が膨大になると反対していた。

 だが、パキスタンの洪水やアフリカ北東部の干ばつなど、温暖化の影響とみられる気象災害が世界各地で頻発、議長国のエジプトがCOP27で初めて正式な議題に取り上げた。

 会議では、途上国側の決裂も辞さない姿勢に、欧州連合(EU)が基金設立容認に回り、米国も同調し、画期的な合意となった。議長のシュクリ・エジプト外相は「世界中の何百万人もの人々が期待する重要な政治的決定を引き受けた」と述べた。支援対象となる国や資金拠出の方法などは来年のCOP28で決める。

 合意文書では、世界の地政学的な状況やエネルギー危機などが「気候変動対策の後退の口実に使われるべきではない」と指摘、再生可能エネルギーへのクリーンで公正な移行を加速することを促した。

 産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑える目標については、「さらなる努力を追求する」との表現が維持された。ただ、具体策については「排出削減策のない石炭火力の段階的削減」「非効率な補助金の段階的廃止」と昨年通りの記述にとどまった。EUなどが、石油や天然ガスも含めた「すべての化石燃料の段階的削減」を提案したが、産油国などが反対し、明記されなかった。

 温室効果ガスの排出削減を加速させるための作業計画も決定した。2030年までに年に少なくとも2回は各国の間で対話をする。ただ、各国に新たな削減目標を課すものではないとの留保がついており、実効性が問われる。(シャルムエルシェイク=関根慎一、合田禄、桜井林太郎)