「赤字だから廃止」鉄道だけ疑問 11年ぶり全線再開の秘境路線

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聞き手・斎藤徹
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 2011年の新潟・福島豪雨で被災し、今月1日に11年ぶりに全線再開したJR只見線(福島県会津若松市新潟県魚沼市)。不通区間の会津川口―只見間は、鉄路や駅舎は福島県が保有し、JR東日本が列車を走らせる「上下分離方式」で復活した。全国各地で赤字路線の廃止・バス転換が進む今、鉄路復旧は正しかったのだろうか。ローカル鉄道に詳しい福島大准教授の吉田樹さんと、ローカルジャーナリストの田中輝美さんに聞いた。

■福島大准教授 吉田樹さん

 JR只見線で不通になった会津川口―只見間を復旧させるか廃線にするかについて、福島県や会津17市町村、JR東日本が進めた協議では、復旧や再開後の維持管理にかかるお金が出せるかどうかという話が先に進み、何のために鉄道が必要なのかという根本的な議論が後回しにされました。

 議論の順番が逆で、鉄道を復旧させる意義が明確でないまま、結果ありきの協議になってしまった感が否めません。このことは、只見線全体を維持存続させていくうえで大きな課題になるとの懸念があります。

 同区間は再開後、鉄道施設は県が保有し、車両の運行はJR東が担うという上下分離方式が採用されました。再び自然災害などで施設が壊れた場合、復旧は県が担うことになります。毎年3億円とされる維持管理費は、県と会津17市町村が負担します。

 人を運ぶだけならバスの方が便数を増やせるし、お金もかからない。営業赤字が続く現状では、只見線はもはや、大量輸送手段としての鉄道の役割を果たせていないのは明らかです。

 全線再開当日、JR只見線の車両は「再開フィーバー」にわきました。このにぎわいを一過性ではなく持続させるためには、何が必要なのでしょうか。そのヒントを記事後半のインタビューで紹介します。

■輸送手段を超えた価値 生み…

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この記事を書いた人
斎藤徹
山形総局|総局キャップ・県政担当
専門・関心分野
人口が減っても持続可能な地域づくり