第8回アフリカ開発会議(TICAD)が8月末、北アフリカにあるチュニジアで開かれました。岸田首相が今後3年間で官民300億ドル(約4兆円)規模のアフリカ投資を目指すと表明しましたが、日本の対アフリカ直接投資残高は2013年の120億ドルをピークに減少傾向に転じています。何が起きているのか。そして日本に求められる戦略は何なのか。日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所の上席主任調査研究員、平野克己さんに聞きました。

 ――アフリカの経済的な将来性をどう見ますか。

 私たちは、経済成長というと国内総生産(GDP)の増減を見るわけですが、アフリカのGDPは資源価格で動くことに注意が必要です。アフリカの総輸出の6~7割は原油ですから、資源価格が高くなるとアフリカのGDP成長率も自然にあがり、下がるとマイナス成長になります。つまり、GDP成長率は資源価格の動きを表しているにすぎないのです。

 ですから、GDPだけを見て「高成長だ」「停滞だ」といっても、それは必ずしもアフリカの経済実態を示していない。資源価格の影響に注意しつつも、アフリカの経済実態がどのように動いているかを見なくてはいけません。そこで重要になるのが人口です。

 ――アフリカの人口が今後伸びていくことは確実ですね。

 その通りです。アフリカでは、放っておいても消費需要が毎年2.5%ずつ伸びていきます。これは今の日本にとってはうらやましい限りですね。アフリカでは1950年からずっと、毎年2%以上、人口が増加しているのです。潜在市場が膨らみ続けているわけで、これを購買行動につなげるビジネスモデルが鍵を握ります。事実、消費に特化したビジネスはものすごく成長しています。

 資源ブームの少し前から、南アフリカ企業を代表格とするグローバル企業がそうした市場で収益を上げ、やがてアフリカ地場の企業も急成長して、いまのアフリカの経済社会ができました。

 90年代に南アフリカが民主化した時、南アフリカ企業が外に飛び出して一気にグローバル企業になっていきました。スーパーマーケット、銀行、建設、医療・ヘルスケア企業、携帯電話会社などが挙げられます。いきなり世界中に出て行った企業もありますが、多くはアフリカ内で展開しました。それがきっかけになり、資源ブームを追い風にして、他のアフリカ諸国からも起業家がでてきます。それがいまのスタートアップブームにつながってきました。こうしてアフリカに企業社会ができたのです。

 ――企業社会というのは?

 日々の一般生活の財サービスが企業活動によって提供されている社会で、企業が政治経済に大きな影響力を持つ社会です。企業がなぜ急成長できたかというと、アフリカ経済が伸びているからとしか言いようがありません。アフリカ経済を見るとき、国単位の政府の政策を見ているだけではダメで、企業をみないとわかりません。

今世紀末には人類の6割がアフリカ人

 ――今後成長が見込めるアフリカに日本が関与していくことの重要性は?

 2050年までに世界人口の4分の1がアフリカ人になり、今世紀末には4割がアフリカ人になるというのが国連の予測です。ただ私は最近、その予測が正しいかどうかを分析する本を書きました。国連予測はアフリカの人口増加率が今後急速に下がる想定に基づいていますが、そのような兆候はまったくありません。

 現在のトレンドのままいけば、…

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