第2回「大うそだ。責任をとれ」記者に激高した男性 帰れない人々は今も

有料記事IS後を生きる 消えない苦悩

モスル=高野裕介
【動画】過激派組織「イスラム国」(IS)の支配から解放されて5年が経ったイラク北部のモスル=高野裕介撮影
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 熱風にのった異臭に、以前に訪れたときの光景を思い出した。人間の手や足、腰の部分が所々に転がっていた時のことを。

 「この3カ月だけで、がれきの中から9体の遺体が見つかった」

 今年8月、防弾チョッキを着て、不発弾や地雷の処理をしていた男性が教えてくれた。

 異臭が、今も残る遺体のものかはわからない。

 許可を得て周囲を歩いた。ロシアが侵攻したウクライナで取材を進めていたときと同じように、崩れた場所には不用意に足を踏み入れない。

 手元の気温計は45度。かろうじて原形をとどめている家々と、茶色いがれきの山が目に飛び込んできた。

 「Safe」と、建物の壁に黒く殴り書きされた場所がある。不発弾を除去し、安全を確認したサインだ。

 戦闘が終わって5年が経つのに、今もこの場所で暮らせそうにはない。

 「ここに来てうれしいかい?」

 ゆったりした民族衣装を着た…

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