年収1千万円を捨てるまで ふるさととのリモート兼業が人気の秘密

有料記事東京インサイド

森下香枝
[PR]

 首都圏の在住者が、ふるさとなど縁のある地域でリモートで週1回ほど仕事をする。そんな兼業が人気を呼んでいる。この試みは、労働者や地方企業、さらに地方自治体にとってもメリットがあるという。その魅力とはなんなのか。

古民家に魅せられて

 「東京を経由してグローバルな事業をやるのではなく、ローカルと海外をダイレクトに結ぶ仕事を前から自分の手でやりたかった」

 都内に本社がある大手自動車メーカーで、海外の新規事業を担当する部署に勤務していた佐々木康人さん(33)は昨年5月、NPO法人・G-net(岐阜県)が運営する「ふるさと兼業」のサイトを通じて、古民家を海外へ移築する事業の求人に応募した。

 求人を出した戸田工務店は、愛知県新城市に本社を置く建築会社だ。木造建築や古民家のリユースを得意としている。

 古民家の海外移築事業を本格化させたかったが、社員で海外取引を仕切れる人材がおらず、頭を抱えていた。そんなとき、地元の経営者仲間の勧めで「ふるさと兼業」で求人を出した。

 米国オレゴン州に古民家を移築し、現地の建築家らと古民家の展示場を造る海外事業。戸田工務店のマネジャー、戸田幸志さん(42)は「佐々木さんが右腕になってくれたおかげで事業が一気に進んだ」と振り返る。

 佐々木さんの業務は週に1回、夜に約2時間、リモート会議に参加すること。報酬なしのボランティア参加で、自身の経験から戸田工務店にアドバイスを送ったという。

 「戸田工務店の突破力にほれ込んだ。古民家の事業はワクワク感がある」

 佐々木さんはこの事業に魅了され、昨年6月末に会社を退職。同7月には愛知県へ移住した。初任地で土地勘があった上、妻の勤務先も愛知県に本社があったことも後押しした。

 移住後、職業訓練学校に通いながら、戸田工務店の業務を続け、昨年末にコンサルタントとして独立することを決意。戸田工務店と今年2月、新たに業務委託契約を結んだ佐々木さんは今、週1回のペースで戸田工務店に出社している。来年1月には戸田さんと一緒に米国へ出張する。フランスや韓国からも古民家移築の問い合わせが相次いでいるという。

 戸田さんは「年収1千万円の大企業を辞めて中小企業のうちと事業をするなんて……」と驚く。

求人の倍率が55倍と人気を呼んでいる「鳥取県で週1副社長 とっとり副業・兼業プロジェクト」を仕掛けたのは鳥取県。地方企業だけでなく、自治体も力を入れるわけを紹介します。

  ◇

 社員の副業・兼業を認める企業が首都圏を中心に増え、人手不足に悩む地方企業の受け皿になり始めている。

 NPO法人・G-netは2…

この記事は有料記事です。残り1778文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

東京インサイド

東京インサイド

東京の気になるニュースや街の話題が満載。あなたの「!」「?」に答えます。[もっと見る]