「問題意識ない人はいない」 専門家が見た声を上げない若者側の事情

参院選2022

聞き手・小林直子 足立優心
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 【神奈川】選挙になると、なにかと「若者」が注目される。いま、どんな状況に置かれているのか――。10~30代の視点で各党や自治体に政策提言してきた一般社団法人「日本若者協議会」代表理事の室橋祐貴さん(33)に、若者をとりまく問題について聞いた。

 若者の投票率が低いと言われますが、なぜ投票に行かないのか。それは「行ってもあまり意味がない」と思っているからです。

 グローバル化が進み、臨機応変さが求められるようになりましたが、日本の教育現場はルールに従って動くように指導してきました。ルールを疑うことや変えられるということは教えてきませんでした。

 「ブラック校則」の問題に取り組むために、日本若者協議会で児童・生徒にアンケートをしたところ、多くの人が校則を問題視する一方で、「声を上げることで学校が変わるとは思えない」と答えた人は7割に上りました。子どもたちが成長する過程で「おかしい」と声を上げた時、先生や親が取り合ってくれなかったといった、ある種の「失敗体験」を積んでしまっているのです。

 ただ、いまの世の中で何の問題意識も持っていない若者なんていないと思いますよ。声を上げるか、上げないかの違いです。でも、声を上げないからと言って、問題がないと思っているわけではないんです。

 声を上げる子は自由な校風の私立出身だったり、海外留学の経験があったり。どこかで「行動すれば変えることができる」という成功体験をしていることが多い。ただ、私立に通わせたり留学をさせたりするには経済力が必要になります。社会課題に対して声を上げるかどうかは、そういった部分の影響もあります。

 新しい学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」という言葉が入り、ようやく教育が転換期に入りました。子どもの権利を尊重し、自分たちの社会は自分たちでつくるということを教育現場でやっていく必要があると思います。

 問題は賃金が上がっていないのに支出が増えていること。大学卒業と同時に、年収と同じくらいの奨学金の返済という借金を抱えている状態です。いかに若い世代の負担を減らして、子育て支援や教育政策を拡充するか。この国の未来はそこにかかっています。このまま少子化が進むと日本はつぶれてしまいます。

 よく「海外と比べて日本の若者は気候変動に関心が低い」と言われます。気候変動という将来的な問題に向き合うには、いま身近な問題が解決されていることが前提です。環境活動家のグレタ・トゥンベリさんを生んだ北欧などと違い、日本にはまだ若者の身近に問題がありすぎる。そのことを重く見るべきです。

 問題を解決するには、世代を超えたコミュニケーションが必要だと思います。多世代で議論すれば人口が多い上の世代も若い世代の問題を認識できるでしょうし、その逆もあるでしょう。そういった場が今後、非常に重要です。

 参院選被選挙権は30歳以上。18歳から見たら最低でも一回り上の人を選ぶことになります。遠く感じて当たり前です。でも、投票には行ってほしい。「知識がある人に決めてほしい」という人もいますが、総合的に見て、自分が一番良いと思う政策を掲げる党や候補者を選べば良いのです。

 投票したらその候補者のことが気になるはずです。当選した場合、できればツイッターをフォローしましょう。任期中に仕事をしているかどうかが分かります。仕事をしていないと思ったら次はその人には投票しない。そうやってルーチン化することで、知識は積み重なっていくものです。(聞き手・小林直子、足立優心)

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