物理好き彼女の家で猛勉強 見習い中に結婚、2人をつなぐ赤い電車
今泉奏
見習い中に結婚する人は少ない。まだ何者にもなれていないのに、決断するのは難しいからだ。でも、そうでない道を選ぶこともあるらしい。
「パンタよしっ」
3月中旬の朝、名古屋鉄道の神宮前駅のホームに張りのある声が響いた。見習い運転士の小倉裕樹さん(27)は、赤い電車を待ち構えて指さし確認をした後、運転席に乗り込んだ。
幼いころから、電車の運転士にあこがれていた。愛知県小牧市の実家は名鉄間内(まない)駅近くで、赤い電車が行き交うのを眺めるのが好きだった。
「電車の運転士はかっこいい」
その思いは、大人になっても変わらなかった。地元の大学を出て、名鉄に入社した。
2歳上の「彼女」と出会ったのは、2019年の冬だった。お互いの趣味でもあるテニスを通して距離を縮め、半年後につきあい始めた。
電車の運転士の研修は7カ月に及ぶ。研修直前の昨年9月1日、「彼女」の家で彼は切り出しました。小さなフルーツタルトを忍ばせて。
仕事でも、駅員から車掌へと…