ふるえる指先、初めて握るレバー 女子校育ちの私が師匠と進むレール
ふるえていた。
何度も乗った電車なのに、初めて運転席から見た景色は違う乗り物のようだった。
ブルルルと響くモーター音に心音が重なる。
「師匠」と目を合わせ、おそるおそるレバーを引く。
金属音を響かせ、電車が走り出した。
鉄道運転士の世界には「師弟関係」がある。名古屋鉄道でも、運転士の卵は3カ月の学科研修の後、4カ月かけて先輩運転士からマンツーマンで運転技術をたたき込まれる。
見習い運転士の杉浦優子さん(24)の師匠は、この道13年の矢島伸吾さん(38)だ。
1月上旬の朝、2人は神宮前駅(名古屋市熱田区)から運転席に乗り込んだ。冷たい雨でぬれたレールの上を電車が走り出す。「ブレーキ利いてる感じするかな」と聞く師匠に「かけているのに雨だとなかなか減速しないですね」と答える。
そんなに「女の子」じゃない
初めて運転席に座ってから1カ月が経った。はじめは緊張と恐怖で指先がふるえたが、レバーを握る感触も少しずつなじんできた。ただ「安全確認にブレーキ、時刻のチェック。同時に進めると、頭ではわかっても体がついてこない」と明かす。
男性が多い鉄道業界とは対照的な世界で育った。高校から短大まで女子校に通った。合唱部で歌が大好きな少女だった。4年前の入社式では、社歌を歌う同期の声がのぶといことに驚いた。1オクターブ高い自分の声が目立ってしまうのが恥ずかしかった。
愛知県の三河地方出身で、名…