終わらない干ばつ ヤギ280匹失い 「子ども飢え死んでしまう」
「アフリカの角」と呼ばれる大陸北東部で、2年に及ぶ干ばつが続いている。生活の基盤である家畜を失った牧畜民たちは、餓死の危機にさらされている。
風が吹くと、マスク越しにも死臭が鼻をついた。目の前では、50匹以上のヤギの死体が地面に張り付くように干からびつつあった。
「これはごく一部。死んだ家畜はこんなものじゃない。向こうでもっと死んでいるのを、自分の目で確かめなさいよ」
1月29日、干ばつが続いているケニア北部モイテ村を訪れると、ジェシンタ・ロプスさん(35)が、こちらをにらみつけるように叫んだ。財産の全てである280匹のヤギのうち、2匹を残して全てを失ったという。
電気も水道も通っておらず、携帯電話の電波さえ届かないその村の中心部から、さらに数キロ離れた荒れ地にロプスさんは暮らす。
ケニア北西部は、隣接するエチオピア南部、ソマリア南部とともに2020年10~12月、21年3~5月、同10~12月の3回の雨期で十分な雨が降らず、世界食糧計画(WFP)が「1981年以降最も乾いた状況」と表現する干ばつにあえぐ。ケニア政府は昨年9月に「国家災害」を宣言。3カ国で飢餓状態に陥っている人はすでに推計1400万人に上っており、今年末までに2千万人に達する恐れがあるとWFPは警告している。
ロプスさんによると、ヤギたちが一斉に死んだのは1月20日ごろのことだった。
長く続いた干ばつによって、ヤギのえさとなる雑草はほとんど残っていなかった。ロプスさんはその日、あばら骨が浮き上がったヤギたちを連れ、少しでも草の生えている場所を探して乾ききった川を渡り、自宅の数キロ先で放牧していた。
すでに弱りきっていたヤギだが、大量死を招く最後の決定打となったのは、皮肉にも待ちわびていた雨だった。
午前8時ごろのことだ。突然…
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