シリア系米国人医師の警告 「失敗から学べ」 人道回廊も見極めを
「シリアで起きたことは、ウクライナで起きていることと、一直線につながっている」。そう話すシリア系米国人がいます。ザヘル・サフルール医師(56)。NGO団体の代表として、故郷であるシリアを何度も訪れ、医療を提供してきました。
ロシアが軍事介入をしたシリアから学べることはなにか。サフルール医師は、安全な市民の避難、支援物資の運搬を可能にする「人道回廊」についても、注意深く見ているといいます。
――シリアとの関わりを教えてください。
両親がシリア人です。私の生まれはアルジェリアですが、育ちはシリアで、シリアの大学で医学部を卒業しました。1988年から米国に暮らしています。ただ、両親はまだ、シリアに住んでいます。
2011年にシリア内戦が始まってから、母国への医療提供や人道支援に携わるようになりました。1年に1回以上は訪れており、今回も先日まで滞在していました。反体制派が支配する北西部の避難民のキャンプを訪れると、寒さのために子どもが凍死していました。アサド政権軍側による砲撃は、2~3日おきにあります。私が到着する前日には、はしかの予防接種会場が攻撃にあい、子どもを含む8人が亡くなりました。
経済や治安の状況は、1~2年前に比べてよくなりました。ただ、次の日のことは考えられない。だれも確実なことがわからないんです。「アサド政権が続く限り、自分の街には戻れない」と、みなそう言うわけです。
――シリアとウクライナで共通しているのは、ロシアの存在です。ロシアは2015年9月、シリア内戦に本格的に軍事介入し、支援していたアサド政権の軍事的な優位を確実なものにしました。ロシアにとって「成功体験」になってしまったのではないでしょうか。
ロシアの戦争に共通するもの
シリア人に聞けば、「それは…
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- 【視点】
市民を標的とする攻撃もためらわないロシアの非人道性は世界を震撼させているが、シリアの人々にとってはそれは「常識」だという。 ウクライナへの侵攻が起きるまで、世界、とりわけ西側諸国の多くの人々は、プーチンの危険なパーソナリティを知りつつ
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