幼少期の夢は「スパイ」…プーチンとKGB 当時から「敵はNATO」(アーカイブ配信)

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駒木明義 吉田美智子
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連載「プーチンの実像」(2015年) 第一部「KGBの影」①

 底冷えがする夜だった。1989年12月5日。旧東ドイツ・ドレスデンの秘密警察シュタージ支部は、外気とは裏腹に、約5千人の民衆で熱気に満ちていた。東西冷戦の象徴「ベルリンの壁」崩壊から1カ月、約200キロ南のドレスデンでも、民主化を求めるデモ隊が押し寄せていた。

 「私たちの(情報を記録した)資料を返せ」。興奮した民衆は雄たけびをあげ、壁をよじのぼった。ほぼ無抵抗の支部を占拠し、約6時間たったころ、群衆の中から「KGBも占領してやろう」と声があがった。15人ほどのグループが約100メートル離れた旧ソ連国家保安委員会(KGB)の支部に向かう。

ロシアのプーチン大統領とは、どんな人物か。欧米への敵意をむき出しにし、ウクライナに軍事侵攻した今、2015年に展開した連載「プーチンの実像」をアーカイブ配信します。(年齢や肩書は当時。敬称略)

 当時、旧東独の政府系研究所のエンジニアだったジークフリート・ダナートグラプス(82)も、その中にいた。「シュタージの建物をあまりに簡単に占拠できたので、みんなKGBもできると確信していた」

 深夜にもかかわらず、KGBの支部があるコンクリート造りの建物は、いつも通り明かりがついていた。1メートルほどの高さの鉄製の門の前にたどり着くと、警備の兵士が慌てて中に入って行くのが見えた。少しして、「制服を着ていなければ将校とは思えないほど、小柄でやせ気味」の男が出てきた。

ロシアのプーチン大統領の実像に迫る連載です。第一部では、KGBエージェントとしての経験が現在に投げかける影を追います。

 男は門から少し離れた位置に立ち、デモ隊をじっと見ながら告げた。

 「ここに侵入することは断念しろ。武装した同僚に、ここを守るよう指示した。もう一度言う、立ち去れ」

 男の脇の兵士は、銃で武装し…

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    遠藤乾
    (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
    2022年2月28日23時53分 投稿
    【視点】

     タイムリーなアーカイブ発信。2015年の連載時にも読んでいたはずだが、改めていまよむと、新しく気づかされることもある。  その一つが、「だが、なぜNATOに入るのか。米国と一体になって包囲網を敷く。軍事同盟じゃないか。そんなことのために

    …続きを読む
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