国策にゆれる馬毛島 混乱経て受け入れた先行地で見えてきたものは
鹿児島県の無人島・馬毛島(まげしま)への米軍訓練移転と自衛隊基地の整備をめぐり、地元・西之表市を二分する問題が続いている。衆院選でも、必要性を説く自民前職に野党新顔は「地元無視」と反発する。防衛上の「国策」に、住民はどう向き合うべきか。軍事施設を受け入れた地域の今から島の将来を考える。
鹿児島市から高速船で1時間半。衆院鹿児島4区の西之表市で20日、自民前職の森山裕氏(76)が支持者を前に声を張り上げた。
「自衛隊の訓練施設がどうしても必要なんです」
大隅海峡を艦船が航行するなど中国の軍事的圧力が強まる中、海峡に浮かぶ馬毛島への基地整備の重要性を訴えた。
一方、馬毛島の計画反対を掲げる社民新顔米永淳子氏(58)は21日の演説で、「地元市長が反対しているのに国は一方的に軍事基地化を進めている」と批判した。
NHK党の新顔宮川直輝氏(48)は自衛隊施設に賛成しつつ米軍訓練移転には反対する立場だ。
馬毛島への米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)移転と自衛隊の基地整備計画をめぐり、種子島の一角にある西之表市では地域を二分する論争が続く。1月の市長選では、計画反対の現職が賛成派の新顔を破り再選したが144票の僅差(きんさ)で、市内では沖合約10キロに位置する馬毛島を話題にしにくい空気が広がる。
騒音被害や環境破壊による島の変容を懸念する反対派の1人、宇野裕未市議(44)は国際NGOピースボートで世界64カ国を回り、貧困や災害で苦しむ地域の人たちを見てきた。「こんなに穏やかに暮らせるまちは世界にもそうない。基地に頼らなくても古里の豊かな環境を生かした地域振興策があるはずだ」と語る。
賛成派が期待するのは、自衛隊員と家族の移住、それに伴う消費やインフラ整備などに伴う経済効果だ。
推進派の政治団体「西之表市と馬毛島の未来創造推進協議会」事務局長の杉為昭市議(55)は「経済効果とてんびんにかければ、現実を見据えるしかない。子育てにお金がかからないようにすれば人口減少にも歯止めがかかる」と主張し、基地受け入れに伴う国からの交付金を活用した子育て施策の充実を見込む。
島を支える第1次産業の振興にはお金もかかる。なにより、就職や進学でいったん島を出た人たちの親が口にする「子どもたちは市の将来を想像できないと言っている」という困惑を何とか払拭(ふっしょく)したいという。
賛否を割り切れない住民も多い。地域の将来像を話し合う会合に校区長として参加する窪田良二さん(54)は「地域の課題もいろいろあるが、なにより市民の分断が一番気になる」と語る。馬毛島問題には中立の立場だが、国策先行で地元が置き去りにされないか不安が募る。「賛成、反対どちらの言い分も分かる。いろんな角度から馬毛島問題も含めて地域のことを自分たちで考えたい」
馬毛島での訓練を想定する米…
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