「一発勝負」の韓国大統領ってどんな存在? 巨大な権力とその末路

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聞き手・大部俊哉
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 お隣の韓国で、大統領選挙が来年3月に迫っています。10日に与党の公認候補が決まったほか、最大野党の候補者も11月に決まる見込みです。選挙の行方は韓国国内だけでなく、日本や北朝鮮との関係にも影響します。強大な権力を持つ一方、任期5年で再選の道がない「一発勝負」の韓国大統領。どんな権限を持ち、どんな歴史をたどってきたのか。そして、今回の選挙のポイントは――。慶応大の西野純也教授(東アジア国際政治)に聞きました。

 ――韓国の大統領には、憲法で強い権力が与えられています。どのような特徴がありますか。

 国家元首であり行政のトップで、国軍の統帥権も持つなど、多くの権限があります。中でも一般的によく挙げられるのは、予算と人事です。国会への予算提出権を持ち、政府官僚や、日本の最高裁長官にあたる大法院長の最終的な任命権も大統領にあります。行政だけでなく司法まで、あらゆる分野に意向が反映されやすい制度になっています。

 ――軍の統帥権を見ても、米国では議会にある宣戦布告の権限を持つなど、他国の大統領にない権限もありますね。

 突出しているというわけではありませんが、他国の大統領と比較しても権限は多いと言われています。韓国では「帝王的」大統領と称されることもありますが、これは国会との力関係が影響しています。内政について国会の権限が大きい米国と比べ、韓国は制度上、大統領の権限の方が大きいからです。朝鮮戦争が終結せずに休戦中という特殊な状況下によって、大統領が強いリーダーシップを発揮することが正当化されてきたという側面があります。

 ――権力の集中を見直す議論はあるのですか。

 以前からありますが、近年では2018年に文在寅(ムンジェイン)政権(17年~)が、国家元首の地位の削除など権限の縮小や分散を盛り込んだ憲法改正案を国会に提出しました。しかし結局、改正には至っていません。

 ――なぜ実現しなかったのでしょうか。

 野党の反対に加えて、大統領…

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この記事を書いた人
大部俊哉
マニラ支局長|東南アジア・太平洋担当
専門・関心分野
安全保障、国際政治、貧困問題