「従軍慰安婦」「強制連行」5社が教科書訂正 政府答弁受け

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伊藤和行
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 「従軍慰安婦」という用語について「誤解を招く恐れがある」などとする答弁書を政府が閣議決定したことを受け、中学社会、高校地理歴史、公民科の教科書を発行する3社から教科書計10点の記述計11カ所について訂正申請があり、承認したと文部科学省が8日発表した。「従軍」の記述を削除する社や、記述は残したまま政府見解を併記する社など、対応は分かれた。

 政府は4月27日、「『従軍慰安婦』または『いわゆる従軍慰安婦』ではなく、単に『慰安婦』という用語を用いることが適切」との答弁書を閣議決定。一方、「いわゆる従軍慰安婦」という用語を使った1993年の河野洋平官房長官談話は「継承」する立場も記した。これを受け文科省は5月、教科書会社20社近くを対象に説明会を開き、訂正申請は「6月末まで」と示すなどしていた。関係者によると、これまで出たことがない訂正勧告の可能性にも触れたという。

 文科省によると、「従軍慰安婦」の記述については、山川出版社、実教出版、清水書院の3社から6月末に訂正申請があり、萩生田光一文科相が8日承認した。山川出版社は、現在使われている中学社会科や高校の日本史の教科書にある「いわゆる従軍慰安婦」という記述をなくしたり「従軍」を削ったりした。一方、清水書院は来年度から高校で使われる「歴史総合」の教科書で、「いわゆる従軍慰安婦」の記述は残したまま、注釈に「日本政府は、『慰安婦』という語を用いることが適切であるとしている」との政府見解を付記した。

 また、戦時中に朝鮮半島の人々を日本で働かせたことを「強制連行」と表現することについても、政府が「適切でない」との答弁書を4月27日に閣議決定しており、これらの3社と東京書籍、帝国書院の計5社が、「徴用」「動員」などと計28点で計53カ所の記述を訂正した。

 中学の社会科や高校の地理歴史、公民科の教科書は、2014年の検定基準改正で「政府見解がある場合はそれに基づいた記述」をすることが定められた。(伊藤和行)

各教科書会社の主な訂正内容…

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    木村草太
    (憲法学者・東京都立大学教授)
    2021年9月9日20時44分 投稿
    【解説】

    記事にある通り、義務教育諸学校教科用図書検定基準では、「社会科(「地図」を除く。)」について、「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること」とされている。

    …続きを読む