間一髪、極秘の国外脱出 直前に買ったアフガン国旗

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ニューヨーク=藤原学思
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 故郷を去る数時間前、小さな国旗を買った。「アフガニスタンを愛しているから」。でも、機内から故郷を見つめ、思った。「この国は何かが間違っている」

 生きのびた。ただ、自分たちだけが助かった。

 いまは自由を感じる。ただ、家族の心配が残る。

 運が良かった。ただ、運に恵まれなかったひとも、たくさんいる。

 アフガニスタン人のモハメド・エサン・サーダットさん(33)はいま、複雑な感情を抱えている。タリバンが実権を握る直前、妻と2~11歳の子ども4人とともに、カナダに逃れた。

 それは、誰にも知られてはならない渡航だった。

 今月5日夜、サーダットさんはカナダ移民局からメールを受け取った。

 《7日の午後6時半までに、カブールのカナダ大使館に来てください》

 カナダ政府の特別移民プログラムに選ばれ、ビザ発給を知らせるものだった。この数日前、フェイスブックでの友人の投稿でプログラムについて知り、申し込んでいた。メールには注意書きが添えられていた。《この情報は誰とも共有しないでください》

 うれしくて、絶対にこの機会は逃すまいと、20回はメールを読み返した。荷物は1人あたり23キロまで。結婚式の映像や家族写真、大学の卒業証書、地元で作られたカーペットなどを急いでカバンに詰めた。

迫るタリバン 親族にも別れつげず

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この記事を書いた人
藤原学思
ロンドン支局長
専門・関心分野
ウクライナ情勢、英国政治、偽情報、陰謀論
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