バイデン氏、格差是正へ大きな賭け 日本化の懸念が伏線

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青山直篤=ワシントン 榊原謙
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 バイデン米政権は、空前の財政出動で格差を是正する姿勢を打ち出してきた。米国で「大きな政府」への反発は根強いものの、コロナ禍と中国の挑戦という二つの危機への対応としてひた走る。狙うのは、世界恐慌と第2次世界大戦の危機を弾みに、社会の転換をはかったルーズベルト大統領の再現だが、リスクを伴う「賭け」でもある。

あおやま・なおあつ 1981年生まれ。朝日新聞デジタルで、グローバル化と民主主義のありようを探る企画「断層探訪」を連載中。

 7月23日、来年の中間選挙の試金石となる今秋のバージニア州知事選候補の応援演説の取材に行った時のことだ。間近でみるバイデン大統領は、ふだんより高揚して見えた。野外集会場でマスクをせず密集した聴衆を前に、半年間の手応えを感じたのかもしれない。力を込めた言葉が空に響いた。

 「トリクルダウンは失敗だった。中間層や労働者を大切にすれば富裕層が苦しくなるなんてことはない。富裕層はいつだってうまくやる」

 政府が民間経済になるべく介入せず自由な競争を促せば、勝者の富が増し、その富が低所得者にしたたり落ちるとみる「トリクルダウン」。福祉国家の行き詰まりが意識された1980年代、レーガン政権が始めた減税と規制緩和を軸とする「小さな政府」を象徴する言葉だ。冷戦後のグローバル化も追い風となって過去数十年間、主流だったこの自由化重視の路線を、バイデン氏は変えようとしている。

 その3日前の7月20日、米…

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この記事を書いた人
青山直篤
ニューヨーク支局長
専門・関心分野
米国、国際政治・経済、日米関係、近代史
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    三牧聖子
    (同志社大学大学院教授=米国政治外交)
    2021年8月1日21時13分 投稿
    【視点】

    引用されたバイデンの「トリクルダウンは失敗だった。中間層や労働者を大切にすれば富裕層が苦しくなるなんてことはない。富裕層はいつだってうまくやる」という言葉が印象的だ。4月に行われた施政方針演説はじめ、バイデンはこれまでも、新自由主義がいかに

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    江渕崇
    (朝日新聞経済部次長=日米欧の経済全般)
    2021年8月1日14時48分 投稿
    【視点】

     新自由主義と株主資本主義を支配的な価値観として奉じてきたアメリカ経済が、ほぼ半世紀ぶりの転換点に立っています。バイデン政権の誕生と、その後の意欲的なコロナ対策がそのことをはっきり示したわけですが、ここで重要なのは、その転換を具体的な政策で

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