バッハ氏の広島訪問は「五輪開催に利用?」 被爆者の声

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岡田将平
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 「核兵器廃絶の訴えが世界に届いてほしい」「五輪開催に利用されるのではないか」。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長の広島訪問を、被爆者らは期待と懸念を抱きながら見守った。

 「核兵器のない方向に進んでくれることを願っとりますよ」。バッハ氏平和記念公園原爆死没者慰霊碑に献花する姿を見つめた広島県原爆被害者団体協議会(坪井直理事長)理事長代行の箕牧(みまき)智之(としゆき)さん(79)は、淡い期待を込めた。

 「平和を象徴する祭典」と理解している五輪には特別な思いがある。1964年の東京五輪を見たくて、お金をためて上京した。体操や水泳を観戦し、マラソンも沿道で応援した。テレビで見た開会式には、原爆投下当日に生まれ、最終走者を務めた広島県三次市出身の坂井義則さん(2014年死去)が聖火台に上り、聖火をともす姿に感激した。当時のチケットや写真をおさめたアルバムは今も自宅で大切に保管している。

 多くの人が盛り上がった前回と比べ、今回はコロナで「台無しになった」と感じる。緊急事態宣言下の東京からバッハ氏や多くの随行者がやってくることで、感染拡大を懸念する。その一方で「来たからには、原爆ドームを眺め、資料館を見てしっかり感じてほしい」と願った。

 箕牧さんは、16年5月のオバマ米大統領(当時)と、19年11月のフランシスコ教皇の広島訪問の際も近くで見守った。影響力のある人の被爆地訪問が、今年1月に発効した核兵器禁止条約の追い風になったと信じている。

 だが、核保有国やその「核の傘」に頼る日本は条約に後ろ向きだ。同じ「核の傘」に頼るドイツ出身のバッハ氏にも「橋渡し役になってほしい」と思う。「数年後、バッハさんが広島に来たことが『案外良かったよのお』という時代がくればいい」

 一方、世界の核被害の救済を…

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