メディア各社、女性幹部わずか 制作物への影響指摘も

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大野択生 弓長理佳
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 日本のメディアに女性の幹部が少ないことが、複数の調査で明らかになっている。男女比の偏りによる番組や記事への影響も指摘されている。

編集トップの女性 海外22%、日本0%

 「全国の民放局の7割は女性役員ゼロ」。日本民間放送労働組合連合会(民放労連)は5月、全国の民放127社を対象にした初めての調査結果を発表した。

 今年3月までの1年間の調査で、地方の系列局・独立局も含めた役員1797人のうち、女性は40人(2・2%)。91社は、役員が全員男性だった。

 民放労連の50代男性は「業界ではいまだに『マスコミは男性の仕事』という認識の人が多い。視聴者の半分は女性なのにバランスを欠いている」と語る。

 朝日新聞が在京民放キー局5局とNHKに取材したところ、4月時点の各局の全社員・職員のうち女性は21~27%。だが6月末時点の役員(NHKは理事以上)で、女性が1割を超えたのはテレビ朝日(23人中3人)とテレビ東京(16人中2人)のみ。日本テレビとフジテレビはいなかった。

 全国紙5社は全社員のうち女性は18~26%。各社の役員で女性の割合は朝日新聞が23%(13人中3人)、読売新聞が3%(30人中1人)、毎日新聞産経新聞日本経済新聞は0%だった。

 民放とNHKを合わせた6局の全役員のうち女性は5・7%、全国紙5社では4・9%。上場企業3780社の平均6・2%(東洋経済新報社・役員四季報データベース、2020年7月時点)を下回る。

 また、テレビでは制作局長や報道局長、新聞では全社的な編集局長やゼネラルエディターといった、番組や報道、編集全体を統括する全社的な責任者は、テレビ・新聞とも全員男性だった。

 英国の研究機関、ロイター・インスティチュートが今年3月に発表した報告でも、日本を含む主要12カ国・地域のメディア(テレビ、活字、ラジオ、オンラインを含む)240媒体の編集トップ180人の女性率は22%だった一方、日本は0%。海外と比較しても、日本のメディア界の特異さが目立つ。

ジェンダーへの関心、強いと上司が敬遠」

 今年3月、テレビ朝日の「報道ステーション」のCMが公開2日後に取り下げられた。

 「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかって今、スローガン的にかかげている時点で、『何それ?時代遅れ』って感じ」。若い女性がそう話す内容に「なぜ『ジェンダー平等を掲げる政治』が時代遅れなのか」などと批判が集まった。

 同局の女性社員は「ジェンダ…

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    津田大介
    (ジャーナリスト)
    2021年7月1日19時12分 投稿
    【提案】

    新聞やテレビで女性記者は2割強いるのにデスクやキャップ、プロデューサーなど報道内容の意思決定に重要な役割を果たす人材の女性割合が大幅に低いということが問題の本質かと思います。多方面に取材されている良い記事ですが、ジェンダーギャップがあるとい

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    中満泉
    (国際連合事務次長・軍縮担当上級代表)
    2021年7月1日23時45分 投稿
    【視点】

    記事にあるように、ジェンダー平等の観点から日本のメディアが異常なことは何度も指摘されていることです。取り上げる記事や番組制作に影響があり、そのコンテンツの中でも多様性に欠け偏った視点が繰り返されているのは間違いないと思います。ちなみに、昨日

    …続きを読む