毛を生やす細胞の起源を解明 理研チーム、定説覆す発見
髪の毛など体毛を生み出す組織が皮膚上でどのように形作られるのか、理化学研究所などのチームが明らかにした。毛を生やす「毛包(もうほう)幹細胞」が、従来の定説とは違う細胞からできていることを突き止めた。将来的に毛髪再生といった応用につながる可能性もある。
論文は10日、英科学誌ネイチャーに掲載された。(https://doi.org/10.1038/s41586-021-03638-5)
チームは「エクスビボライブイメージング」という特定の細胞に蛍光の目印をつけ、生きた細胞一つ一つの動きや変化を見る技術を使って、マウスの胎児の毛包ができる様子を観察した。その様子をビデオにとり、目当ての細胞を追いながら巻き戻すと、その細胞が元々どこから生まれたか、たどることができる。
遺伝子解析もあわせると、毛包の基になる部分には同じ特徴をもった細胞が同心円状に並び、時間が進むにつれ、真ん中がくぼむように形を変えて筒状になることがわかった。チームは伸縮できる望遠鏡の動きに似ていることから「テレスコープ(望遠鏡)モデル」と名付けた。
毛をつくる働きがある毛包幹細胞は、この同心円の端部分に由来することもわかった。これまでの研究では近くにある別の細胞が基になると考えられていた。
将来的には、毛包がかかわる病気の治療法や、様々な細胞になれるiPS細胞などから毛包幹細胞を効率的につくる方法を開発して毛髪の再生につなげるなどの応用が考えられるという。
理研の藤原裕展チームリーダーは「新しいコンセプトを出せたことはインパクトが大きい。乳腺や汗腺など、他の器官も同じメカニズムでつくられているかもしれない。調べていきたい」と話した。
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