「スライダーじゃない」楽天・松井の恩師が語る魅力とは

室田賢

 東北楽天ゴールデンイーグルスの松井裕樹が9日、日本ハム戦(札幌ド)の九回に登板し、無失点に抑えた。今季9セーブ目を記録し、史上最年少で通算150セーブに到達した。高卒でのプロ入り直後から安定して成績を残し続けた結果だ。母校・桐光学園(神奈川)の野呂雅之監督(59)に、松井の魅力について聞いた。

 松井のプロ2年目だった2015年シーズンの開幕直前、野呂監督の携帯電話がなった。画面を見ると松井の名前があった。

 「『抑えに転向します』と連絡があった。試合に出させてもらうだけありがたいんじゃないかと伝えると、『頑張ります』と言っていた」

 松井は切れ味の鋭さから「消える」とまで言われたスライダーを武器に、高校2年の夏の甲子園では1試合22奪三振の大会記録をつくった左腕。楽天が抑えでの起用を考えていた外国人が故障し、奪三振率の高い松井に急きょ白羽の矢が立った。

 野呂監督は抑えに適性を感じていた。

 「彼のスライダーを1打席で仕留めるのは難しい。抑えと聞いたとき、僕は合っていると思った」

 プロ入り後の松井は大きなケガもなく、2年目の15年から5年連続で50試合以上に登板した。そのうち年間30セーブ以上が4度。

 野呂監督によると、高校時代から体調管理には人一倍気をつけていた。「同じ時間の同じ電車に乗って、トレーナーのところにいっていたんじゃないかな。すでに体を大事にする能力にたけていた」

 松井は、奪三振記録をつくった高校2年の夏の甲子園で大きな注目を集めた。ただ、チームは準々決勝で敗れた。

 甲子園からの帰りに、こう誓ったという。

 「2年生が一番良かったと言われるのが嫌だ」

 課題の制球を安定させるため、走り込みを増やした。スライダーだけに頼らないようにと、3年春からチェンジアップの習得に取り組んだ。いまではスライダーに並ぶ決め球になった。

 努力を続ける姿を見てきた野呂監督は、史上最年少での記録達成に「この上ない喜び」と目尻を下げた。ただ、恩師が考える松井の最も優れたところはスライダーでも、三振を奪う能力でもない。その表裏がない人間性だ。

 「ユニホームを脱いだら『松井君』って男女の友人に囲まれて、中学部の1年生からも好かれていた。てんぐなんてもってのほかで、いつも自然体。誰からも愛されるのが、彼の一番秀でているところかな」

 「数字的には150は節目にあたるが、まだ途中の話。いつもオフに連絡をくれる子。とにかく1年でも長く現役を続け、体を大事にしてほしい」。教え子の体調を気遣い、さらなる飛躍に期待していた。室田賢