政府が新年度からAI(人工知能)を使った婚活支援への補助を拡充させる。パーティーやマッチングなど、行政が婚活を支援するようになって十数年以上が経ったが、婚姻数や出生数は下げ止まらない。取り組みの現状を探った。

 内閣府は「地域少子化対策」として、2014年度から自治体による婚活や新婚生活への支援、子育てしやすい社会の雰囲気づくりに補助金を出している。新年度の予算規模は20億円で今年度と変わらないが、補助割合をこれまでの「2分の1」から「3分の2」に引き上げる。

 施策の目玉は婚活のマッチングシステムにAIを活用した場合への補助だ。従来は年齢や学歴、収入、顔などの希望条件からお見合いの相手を選んでいた。相手が応じれば会えるが、断れば会えない、という仕組みだった。

 すでに先行する取り組みもある。

 愛媛県の「えひめ結婚支援センター」は、従来の条件マッチングのほかに、ビッグデータを活用している。

 まず過去のお見合い希望の結果から、好みが似ている同性のグループを見つける。これを異性側でも行うことで、お互いにお見合い希望は出していないけれど、両思いになる可能性が高い組み合わせを導き出して紹介する。16年度から本格的に始めたところ、お見合いに至った割合は、それまでの13%から直近では33%に上がったという。

成婚カップルの半数、AIが推薦

 埼玉県は婚活支援サービス「パートナーエージェント」を運営するタメニー(東京)と18年10月から提携している。

 「自分には人並み以上の知力がある」「仲間とはいっしょに楽しい時間を過ごす」のどちらにより当てはまるか、といった価値観に関する112の質問に答えると、希望と近い人をAIが導き出して紹介する。相手に求めるタイプと相手の価値観の一致度を重視するという。埼玉県少子政策課によると、結婚に至った半数近くがAIが推薦したカップルだったという。

 えひめ結婚支援センターもタメニーも「従来の方法では、収入や年齢などの数字ばかりが見られる。AIを使って、『会ったら話が合った』というような普通の出会いに近づけたかった」と狙いを説明する。タメニーの担当者は「我々のサービスはまだ『出会い系』と同一視されることもある。行政との協働で信頼も得られる」とメリットも語った。

婚姻数自体は減り続けている

 内閣府によると、従来型も含めてマッチングシステムを導入した県は27に上る。結婚支援センターは34道府県が設けている。

 ただ、行政が支援を続けても、婚姻数は減り続けている。08年の72万6106件から19年は59万9007件に落ち込み、出生数と同様に下げ止まる様子はない。

 茨城県は都道府県として初めての結婚支援センター「いばらき出会いサポートセンター」を06年に設けた。それでも婚姻数や出生数は全国平均より急なペースで下がっている。

 同センターの担当者は「登録者のうち女性は6割が30代なのに対し、男性は40代だけで4割。こうした男性の多くは条件検索で外れてしまう。収入に不安があるのか、若い時には婚活を意識してくれない」と悩みを打ち明ける。

 08年に「『婚活』時代」出版し、「婚活」を名付けた中央大の山田昌弘教授(家族社会学)は「婚姻数が増えない最大の理由は、若者の所得が低いこと。女性は半数以上が非正規で、多くの場合相手に高所得を求めるが、応えられる男性は少ない。そもそも結婚生活を営む自信が持てない。そこが改善されない限り、目立った回復は期待できないだろう」(杉浦幹治