京阪の「降ってくる座席」終了へ 満員電車緩和の名案

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狩野浩平
【動画】京阪電車の「降ってくる座席」。年明けから姿を消していくことになった=京阪電鉄提供
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 大阪と京都を結ぶ京阪電車には、「降ってくる座席」がある。今からちょうど半世紀前の高度成長期に生まれた。超満員の通勤電車を何とかしようと考案された「苦肉の策」だが、時代の移り変わりとともに、年明けから姿を消していくことになった。

 その座席があるのは、通勤用車両「5000系」。都市部でよく見かけるロングシートを備えた車両だが、片側には京阪の他の車両より二つ多い五つの扉がある。

 同社が用意した動画を見せてもらった。扉の上の天井近くに跳ね上がっていた座席が映し出されたと思ったら、ゆっくりと降りてきた。20秒ほどで両隣の座席の間にうまく収まった。背もたれの向こうが窓ではなく、扉なのが見慣れない。

 正式には「座席昇降装置」と呼ばれる。普段、乗客は動く様子を目にすることはできないが、時々公開されており、鉄道ファンらの間では知られた存在だ。

 誕生は1970年12月。満員電車の過密さが深刻な社会問題となっており、京阪でも68年には混雑率が250%に達し、輸送力を高めることが課題だった。当時は線路の数も少なく、ホームの規模も小さい。電車の本数や、1編成あたりの車両の数を増やすことには限界があった。

 そこで、片側の扉を5扉に増やした5000系が登場した。乗り降りにかかる時間を短くし、座席数も減らして、定員を増やすよう設計された。一方で、混雑しない昼間は、座席にゆったり座ってほしい。そうやって考案されたのが座席昇降装置だった。

 京阪の広報部員で元運転士の中西一浩(かずひさ)さん(59)は「アルミ製車両で軽くて加速もいい。今も中心的な車両です」と話す。最盛期には7編成49両が急行や準急として活躍した。今も4編成が現役だ。

 ところが今回の引退は、その「5扉」が最大の原因となった。京阪は駅の安全性向上のため、全駅でホームドアの設置を計画している。このホームドアの位置が「5扉」とは微妙に合わないという。今月8日、5000系について、まずは5扉を開閉させる運用を来年1月29日で終了すると発表した。ホームドアが2021年度中に京橋駅に整備されると、5000系の車両そのものも順次引退していくという。

 人口も経済も右肩上がりだっ…

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