京町家、賃貸住宅に活路 インバウンド激減で宿から転用

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紙谷あかり
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 伝統的な京町家は減る一方だが、京都の街に風情をそえる存在として欠かせない。その保全のあり方が変わりつつある。以前は宿や店に転用されることが多かったが、今はそうした物件を住宅に戻す動きが出ているのだ。主な原因は新型コロナウイルスという。何が起きているのか。(紙谷あかり)

 大徳寺(京都市北区)そばに、築90年ほどの京町家がある。足を踏み入れると土間が広がり、台所などがある細長い土間「走り庭」が奥へと続く。その上は吹き抜け。火袋(ひぶくろ)と呼ばれる独特の造りだ。

 もとは店舗兼住宅だったのを、約20年前に改修工事をして、3年前から一棟貸しの宿として使われてきた。5人まで1泊2万円ほどで泊まれる。

 「外国人や大学教員らが長期滞在で利用することが多かった」

 そう話すのは、宿を管理する地元の不動産会社フラット・エージェンシーの中川桂一専務だ。

 インバウンド(訪日外国人)が急増するなか、市は4年前、2020年までに市内の宿泊施設を4万室に増やす方針を打ち出し、町家の活用も盛り込んだ。16年度の宿泊施設数は約2千軒、客室数は約3万4千室だったが、19年度末には約5万3千室まで増えた。いま約4千軒ある宿泊施設のうち、町家型の簡易宿所は約1千軒を占める。

 中川さんの会社の宿は昨年までは順調だった。だが、今年に入って一変。コロナ禍のせいだ。

 「2月ごろからキャンセルが相次ぎました。稼働率は5%以下になり、厳しい状況でした」

 そこで同社は次の一手に出た。賃貸住宅として生まれ変わらせるのだ。

 「宿泊施設として必要な避難誘導灯などの設備を変更すれば、それほど手間もかかりません」。約75平方メートルで、間取りは5K。月13万5千円だという。

 同社はこの物件を含む7軒の町家を宿として管理してきた。うち3軒を賃貸住宅に転用。すでに2軒は入居者が決まったという。

 「住宅であれ宿泊施設であれ…

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