第5回「愛国心」嫌った三島 憤慨した民族派が理解するまで
編集委員・藤生明
三島事件とその時代⑤
「実は私は『愛国心』という言葉があまり好きではない」「この言葉には官製のにおいがする」。作家・三島由紀夫のそんな寄稿が載ったのは1968年1月8日付、朝日新聞夕刊だった。
「由緒ややさしさがない。どことなく押しつけがましい。反感を買うのももっともだと思われるものが、その底に揺曳(ようえい)している」と書いた。
60年代は公の分野で愛国心が「復権」した時代だ。中央教育審議会の「期待される人間像」で愛国心が強調され、また、建国記念の日もできた。明治百年は国民の愛国心、自尊心をくすぐる大仕掛けの国家行事だった。
そんな時代の三島の弁だ。憤…
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