コロナでも加速、中国の支援 待ち受ける「債務のわな」

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バンコク=乗京真知 シドニー=小暮哲夫 ヨハネスブルク=石原孝 バンコク=貝瀬秋彦 ハノイ=宋光祐
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 新型コロナウイルスの感染の広がりを国内で防ぎながら、「救世主」のように他国へ支援を続ける中国。これまで推し進めてきた巨大経済圏構想「一帯一路」の事業も、世界各地で継続していく構えだ。だが、コロナ危機のさなかに強引に影響力の拡大を図れば、反発が広がる可能性もある。

共通する「インド牽制」の思惑

 「開発事業は国の繁栄につながる変革プロジェクトだ」。パキスタン外務省は5月22日の声明で、国内で進む一帯一路の事業を継続する意思を明確にした。新型コロナの余波で、事業が停滞するとの観測を打ち消すものだ。

 鉄道や道路、港湾、火力発電所など、総額450億ドル(約5兆円)規模の巨大開発が2015年から始まり、大半を中国からの投融資でまかなう。中国の技師や労働者の往来による感染拡大を懸念する声もあるが、政府高官は「中国由来の感染者は一人もいない」と払拭(ふっしょく)に努める。

 継続の背景には、経済発展の基礎となるインフラ開発で、投融資のハードルが低い中国に頼らざるを得ない途上国共通の事情がある。中国とパキスタンにはインドを牽制(けんせい)するという共通の利益もあり、蜜月を続けてきた。

 パキスタンで感染が広がり始めたのは3月中旬。アルビ大統領が訪中し、習近平(シーチンピン)国家主席に支援を直談判した。約10日後、中国はマスク30万枚、検査キット1万2千個、防護服1万着を首都イスラマバードに空輸。地方都市にも万単位の医療品を相次いで届けた。

 パキスタン外務省によると、4月末までに中国から送られた人工呼吸器は計390台、検査キットは計33万個、防護服は計4万2千着に上る。医師団も派遣し、地方の病院で指導にあたった。パキスタンのカーン首相は会見のたびに「中国から優先的に支援してもらえる我々は幸運だ」と、感謝の言葉を口にする。

支援攻勢は中東、南太平洋にも

 過激派組織「イスラム国」(IS)との戦闘終結を17年に宣言し、復興に向けた経済の立て直しが急務のイラクにも、中国は医療チームや検査機器、マスクなどを送った。イラクも昨年9月、当時の首相が訪中して一帯一路への参加の意向を表明している。

 東南アジアや太平洋諸国でも一帯一路を推進してきた中国は、ラオスやカンボジア、フィリピンなどにも医療支援を実施。太平洋の島国10カ国とはビデオ会議を開いた後、島国向けの190万ドル(約2億円)の「対策協力基金」を設けた。昨年9月に台湾と断交し、中国と国交を結んだばかりのソロモン諸島にも30万ドルを寄付している。

 中国は一帯一路を通じて各地で影響力を強めてきた。新型コロナによって一時的に止まる事業もあると見られるが、ASEAN外交筋は「どんな思惑であれ、途上国に莫大(ばくだい)なお金を出し続けるのは中国だけだろう。影響力は今後、さらに強まるかもしれない」と指摘する。

行き詰まる返済、港の権利譲渡

 だが、支援を受ける側の多くを待ち受けるのは「債務のわな」だ。スリランカは17年、中国への債務返済に行き詰まり、南部の港の運営権を99年間、中国企業に譲渡した。

 パキスタン政府は「中国から…

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