ネット上に広がった抗議の声。それに呼応し、徹底抗戦に転じた野党。新型コロナウイルス禍でのこれまでにない共振が、東京高検検事長の定年延長をめぐる政権の思惑を阻んだ。

 緊急事態宣言が続くなかで賭けマージャンをしていた黒川弘務・東京高検検事長が安倍晋三首相(65)あてに辞職願を出した21日、立憲民主党の枝野幸男代表(55)はツイッターにメッセージ動画を投稿した。

 「脱法的に黒川氏を在職させた政治の責任は大きい。政治と距離を置いた検察官の人事体制を変えようとしている検察庁法の改悪を許してはいけない」。一連の定年延長問題で政権の対応を批判し、最後をこう締めくくった。「あなたの力が必要です。おかしな政治を改めていきましょう」

 結党時からの決めぜりふでもあるその言葉には、検察庁法改正案の成立を阻む流れを作ったネット世論との共闘を深めたいとの思いが込められていた。

拡大する写真・図版ツイッターに投稿した動画で、東京高検検事長の定年延長問題を批判した立憲民主党の枝野幸男代表=2020年5月21日(枝野氏のツイッターから)

 ただ、枝野氏は周囲にこうも語っていた。「今回みたいな動きは、狙ってできることではない。1週間前に、こんなに世論が盛り上がるなんて予想できなかったわけだから」。そこには、巨大与党に対峙(たいじ)を続けてきた野党党首の苦悩がにじんでいた。

改正案阻止のシナリオ描けなかった野党

 もとより、野党に改正案の成立…

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