NYの日本人医師感染 軽い違和感が、まさか死の恐怖に

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ニューヨーク=藤原学思
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 最初の異変は倦怠(けんたい)感だった。それから熱が出て、せきが出て、一時は死が頭をよぎった、という。新型コロナウイルスに感染したニューヨーク市の日本人男性医師(49)が9日、電話取材に応じた。医師として、患者として、また一人の夫として、この1カ月間、なにを感じてきたのか。

 男性が勤務するのは市内の医療機関。3月初旬の時点では「通常通りの態勢」だった。上司の一人は「新型コロナなんて大丈夫だ」と言った。「バッドフル(インフルエンザが悪化したもの)のようなもの」。そう話す同僚も少なくなかった。

 男性の勤務先では、3月10日の時点で新型コロナの患者はまだ2人だった。ただ、そのうち1人が人工肺(ECMO(エクモ))をつけていた。酸素供給の装置に患者の血液を通し、肺を休ませるものだ。「よっぽど症状が重くなければ、肺炎でECMOは考えられない」。男性にとって驚きだったが、それでもまだ、院内ですら強い危機感は共有されていなかった。この日は結婚記念日。市の中心部で、妻とディナーを楽しんだ。

「風邪だろう」と…

 ところが、その1週間後の3月17日夕のこと。自宅にいた男性は、体にちょっとした違和感を覚えた。軽い頭痛と、風邪を引いたときのような気だるさ。「疲れているのかな」。そう思ったが、念のため、妻とは別室で寝ることにした。

 18日未明、急な呼び出しがあり、勤務先で仕事をこなした。そのさなかにも頭痛を覚え、帰宅後に熱を測った。平時は36度を切るが、37度近くの微熱だった。「風邪だろう」と思い込んでいた。

 それでも、頭痛と倦怠感がいっこうに引かない。鼻水やのどの痛みはない。19日夜、熱は38度まで上がった。「変だ。風邪じゃないかもしれない」。そう思い、21日になって、勤務先の健康管理ダイヤルに連絡した。保留音のまま、待つこと2時間。感染者が膨れあがっていたせいか、だれも電話に出てくれなかった。不安や恐怖を覚え始めた。

 22日、勤務先に診察を受け…

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