ふしぎな物語(小原篤のアニマゲ丼)

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 ふしぎな物語を見ました。今回は公開中の映画3本のお話です(ネタバレです)。

 まず「蜩(ひぐらし)ノ記」。主人公は、藩主の出生を巡る家老の陰謀の決定的証拠をつかむのですが、息子と青年藩士(主人公を師と仰ぐ)が義憤に駆られ家老を襲撃に行って捕らえられると、2人の命と引き換えにアッサリ証拠の文書を渡しちゃう。スキャンダルと陰謀の子細は書き残して寺に預けたとか言ってたようですけど、そもそもこの主人公は「先代藩主の側室と不義を犯した」罪で切腹を命じられている人なので、肝心の証拠がなけりゃ単なる罪人のタワゴトなんじゃあ……? 腑(ふ)に落ちないクライマックスの仕上げは、「領民をいたぶってばかりいるな!」といさめる主人公のパンチ! 顔面に食らった家老、急に神妙になり「この痛み、忘れてはならん」。えー、何でいきなりいい人に?

 ほかにもいろいろツッコミどころはありますが、笑ってしまったのはくだんの青年武士が、家老と結託している悪徳商人の手下どもをやっつけた後で言うセリフ。「いかん、武士がこんな乱暴を!」。本作の監督は黒澤明監督の弟子の小泉堯史さんなので、黒澤監督の「赤ひげ」でゴロツキどもの手足をバキバキ折った後で三船敏郎さんが「医者がこんなことをしてはいかん」と言う場面を思い出さずにはいられません。なるほど、師弟愛を描いたこの映画は「赤ひげ」を意識しているんでしょう。でも赤ひげは、人を治すべき医者が(人体の知識を悪用して)人にケガを負わせてはいかん!と言ったはずで、青年武士がゴロツキをたたきのめすのは時代劇では当たり前です。それを「いかん!」とか言ってたらたいていの時代劇はお話が進みません。この映画の後の展開を見ても、無理にハメ込んだセリフにしか聞こえませんでした。

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