(社説)道交法改正 時代に応じて適切に

社説

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 悪質で危険な「あおり運転」に対処するため、警察庁が道路交通法の改正を検討している。来年の通常国会への法案提出をめざすという。

 あおり運転にあたる行為を法律に明記するとともに、関係する罰則を強化し、違反した際の点数も引き上げる。ドライバーに意識の見直しを迫り、抑止効果も期待できよう。

 あおり運転が社会問題になっているのを受けて、警察庁は昨年来、「あらゆる法令」を駆使して取り締まりを強化するよう指示してきた。それは、現行法にあおり運転そのものの規定がないことの裏返しだった。

 道路交通法の車間距離保持義務違反での摘発は昨年1万3千件(前年比1・8倍)を超え、悪質・重大な事例には、刑法の暴行罪や傷害罪、自動車運転死傷処罰法の危険運転致死傷罪なども適用された。だが刑罰法規の解釈を広げ過ぎるのは問題をはらみ、実際に裁判で争われたこともあった。その意味でも新たな法整備は必要といえる。

 どんな運転行為が違反とされるのか、一般の人々にもわかるように明確に定め、バランスのとれた罰則を科すことが、取り締まりへの信頼にもつながる。学者や法律家の意見も聞きながら議論を深めて欲しい。

 摘発以外の対策も大切だ。あおり運転をしないために感情をどう制御するか。被害を避けるには日頃どんな注意を払い、それでもあおられた時にはどうしたらいいか。運転免許の取得・更新時の講習を使うなどして、周知を図る必要がある。

 被害の立証に役立つドライブレコーダーの購入費を補助する自治体も出てきた。そうした動きとの連携も考えたい。

 道交法をめぐる課題はほかにもある。中でも高齢運転者の事故防止は急務だ。

 昨年、75歳以上の運転者による死亡事故は460件。全体の約15%で、統計が残る90年以降で最多だった。高齢者は3年ごとの免許更新時に記憶力や判断力の検査が義務づけられるが、死亡事故を起こした人の半数は認知機能の低下の恐れはないと判定されていた。実車試験をして技能を確認することも、本格的に考えるべきではないか。

 警察庁では、自動ブレーキなどの機能がついた「安全運転サポート車」に限定した免許制度も検討されている。公共交通機関の乏しい地域では、車なしには生活が立ちゆかない高齢者も少なくない。導入に向けた議論を加速してもらいたい。

 時代とともに車の運転を取りまく環境は変化している。その動向を見すえ、社会の要請にあわせて、道交法も適切に見直していかなければならない。

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