自宅の庭やベランダでできる生物多様性の保護 ビオトープ作りの勧め

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構成・太田啓之

土曜日の朝刊別刷り「be」で連載している「知っ得なっ得」。今回のテーマは「自宅でビオトープ」。湿地帯の環境を再現したビオトープを自宅の庭やベランダに作り、楽しみながら環境保護に一役買ってらっしゃる方が増えているようです。

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 得子(とくこ) 夕涼みしようと思って池のある公園に来てみたけれど、やっぱり暑いねえ。

 金太郎(かねたろう) この前の夜、ここでヒキガエルに出くわしたよ。

 得 ふーん。池の周囲はコンクリートで固められていて、カエルはすめそうにないけど……。あっ、あそこにはヨシが生えていて水面と陸の間がうまくつながっているね。それで繁殖できているんだ。

 金 どういうこと?

 得 カエルってオタマジャクシの時は水の中だけど、成体は陸地でも過ごすでしょう。こういう生物には、陸と水の間を緩やかにつなぐ「移行帯=エコトーン」が不可欠なの。水と陸が垂直のコンクリート護岸などで隔てられていたら、指に吸盤のないヒキガエルは産卵のため水面に降りられないし、成体になっても陸に上がれない。焼けたコンクリートで干からびてしまうことさえある。ゲンゴロウやトノサマガエル、ドジョウ、メダカなど、エコトーンが必要な生き物はとても多いの。

 金 それって絶滅が心配されている生き物ばかりだね。生物多様性の保全って、最近よく聞くけれど……。

 得 生物多様性に富む環境には、二酸化炭素を吸収し気候変動を緩和する力があるの。多様性の喪失は食生活にも影響がある。例えば握りずしのネタの種類もどんどん減ってしまう。日本で生物多様性を保つには、豊かなエコトーンのある湿地を保つことが特に大切らしいよ。

 金 どうして?

 得 日本を含む東アジアのモンスーン地域では、かつて梅雨から台風の時期にかけて河川が氾濫(はんらん)し、広大な湿地が形成されていたの。東京、名古屋、大阪など大都市がある場所も昔は湿地だった。稲作が始まった後も、水田が湿地と同じような役割を果たしたので、元々湿地に暮らしていた生き物の多くは、水田を中心とする人が手を加えた環境に移住できたんだよ。

 金 映画「となりのトトロ」の舞台になった「里山」だね?

 得 その通り。だけど最近は水田が激減しているし、残された田んぼも用水路がコンクリートで固められるなどして、エコトーンの役割を果たさなくなってしまっているの。

 金 稲作を以前の形で復活させるのも難しそうだね。できることはないのかな。

 得 田んぼや里山も自然そのままではなく、人間の手が加わった二次的な自然環境なんだから、別の形でそれをやればいいんだよ。その一つが「湿地帯ビオトープ」作りだね。

 金 ビオトープって?

 得 「生き物の暮らす場所」という意味だよ。日本で生物多様性を保全するためには、湿地帯の環境を再現したビオトープを作ることが効果的だね。

 金 僕たちにもできるの?

自宅の庭やベランダにどうやってビオトープを作ればよいのでしょうか。このあと得子さんが詳しく教えてくれます。

 得 自治体や学校が維持して…

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